未来景イノセンス

第2回 家出

「雲の下にはなにがあるか」 という話になった。歌はもちろんぼくたちの住んでいる空中都市のことを歌っているのだけど、雲をどんなに眺ながめてみたところで誰もその下になにがあるか目にすることなんてできない。街の上のほうへ登って行って見下ろしても、雲は厚く渦を巻いてどこまでも続くだけだ――。大ヒットボカロナンバー『未来景イノセンス』の発売を記念して、一部を公開します。



 今夜話し合うという約束を反故ほごにして、ぼくの人生を決める大事な決断を断りもなく、しかもぼくの希望とは全然違う方向へと進めてしまうなんて—。

「なんだよコレ! 話するって言ったのに! 約束違うじゃん! なんでそんな勝手なことしたのさ!」
 ぼくはわめき散らした挙句、書類をビリビリに破って、家を飛び出した。追いかけてきても逃げ切る自信はあったが、父も母も追っては来なかった。
 財布は持っていたものの入っていたのは2、3回食事をしたら無くなる程度の金額と通学に使うゴンドラの回数券、厚みのほとんどはポイントカード。着替えもなにも持たずに出てしまった。一晩くらいはどこでも過ごせるさとタカをくくっていたが、いざ一人で歩きまわるとなると案外退屈で、これを朝までと思うと気が遠くなった。

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未来景イノセンス

koyori(電ポルP) /石沢克宜

人々が空に住むようになった未来の世界。空中都市ホクトに住む中学生のシマは、幼い頃­から好意を持っているミドリと同じ高校を受験するも失敗してしまう。好きな人や親友た­ちと離れ離れになる現実から目をそらすシマだが、時間は無情にも過ぎ去って...もっと読む

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