「最高のアイデア」は短時間で生まれる
好きなことのすべてを遮断してまで、結果を出したり、成功したいとは思わない。
そんなふうに考える人もいるのでしょうが、なにも一生、好きなことをあきらめなければならないわけではありません。
私にしても、長く娯楽を絶っていたのは大学受験を終えるまでに過ぎず、特別な時期を除けば、いまもゲームや漫画を楽しんでいます。
前回ご紹介した川上さんにしても、タイミングが違えば、『Ultima Online』を心ゆくまで遊び込めた可能性もあったはずです。
世の中にある大ヒット作や、革新的なコンテンツを見回してみたときに気がつく意外な事実があります。
それは、「短時間で作られたものが多い」ということです。
一般的に、アイデアというのは時間をかけるほど改善するものというイメージがあります。しかし、本当に大きなインパクトのある作品やアイデアは、非常に短い時間でつくられたものが多いのです。
漫画の神様といわれる故・手塚治虫さんは、自身の漫画のアイデアの出し方について、ドキュメンタリー番組の中で次のように話していました。
「〆切の前日になると、俄然、インスピレーションが湧いてくる。一時間の通勤中にアイデアを考えるとき、最初の五分から一〇分のうちに思いついたアイデアが、その後あれこれ悩んだアイデアよりも、結果的に良いものであることが多い」
〆切間近のプレッシャーが強くかかった状態における超短期決戦の中でこそ、多くのすぐれたアイデアが生まれてきていたということです。
時間をかければいいものができるわけではないとはよくいわれることですが、こうした言葉からも実際にそうだとわかります。
時間に甘えることなく、五分、一〇分といった短時間の中でアイデアを練り上げてしまう。そんな気概がクリエイティビティ(創造性)には重要になってきます。