第13回】ネットと現実が融合する位置情報ビジネス最前線

GIS(地理情報システム)の活用は、古くは1970年代から行われてきた。だが、あらゆる業種で国内市場の成長が止まり、顧客をピンポイントで狙わなければならない時代となった今日、一層その重要性は高まっている。GISマーケティング企業であるJPSの平下治社長インタビューも併せて掲載。

消費者をピンポイントで狙い撃ち!

 熟年層の主婦に、買い物帰りの30分間で筋トレなどの気軽なエクササイズを行うスポーツスタジオ「カーブス」。2005年に日本に進出して以降、首都圏を中心に急速に店舗を展開してきた。ところが、総店舗数が750店を超えると、困ったことが起きた。新店と既存店とのカニバリゼーション(自社競合)問題である。

 「40代以上の女性で、徒歩で週2~3回通える地区に住む人」というかなり限定された顧客層を掘り起こす必要がある。さらに大半の店舗をフランチャイズ(FC)オーナーが運営するため、感覚的に行ってきた出店では、余地がなくなってきてしまったのだ。

出店候補地の周辺に、既存店の会員でない潜在顧客がどのくらい住んで いるかを地図上で表示(カーブス)

 そこで導入したのが、GIS(地理情報システム)マーケティング企業のJPSと共同で開発したデータベースだ。地図上に500メートルメッシュで、国政調査の世帯情報を載せ、顧客層に合う年齢層の人口および現在の既存店の会員を地図上にマッピングした(写真)。こうすることで、新規出店時に、潜在顧客が多くかつ近隣の自社既存店の客層を食わない位置を正確に見定めることができた。その結果「店舗当たりの集客数は従来の1.5~2倍に増えた。さらに、これらの情報をFCオーナーに公開することで、近隣に新規出店をする際の苦情が激減した」(山木現一・カーブスジャパン営業企画室長)という。

 GISの活用自体は、古くは1970年代から行われてきた。だが、あらゆる業種で国内市場の成長が止まり、顧客をピンポイントで狙わなければならない時代となった今日、一層その重要性は高まっている。

 その活用の形も進化を続けている。セブン-イレブン・ジャパンや出光興産、日産自動車ディーラー向けに店舗施設などの保守・修繕を請け負うJMでは、GISデータを3次元空間上に展開するシステムを開発した。

 建物や構造物の修繕には2次元のデータでは足りない場合がある。例えば、建物の2階にクライアントの店舗がある場合や、1本の電柱がその高さによって管理者と用途が複数に分かれる場合などがそれだ。

 そこでJMでは、米航空宇宙局(NASA)の火星無人探査車でも使用された車載写真計測システムを利用し、クライアントの指定のエリアを撮影し、3次元画像のデータとして提供する事業を始めている。

 グーグルのストリートビューと似ているが、10メートルピッチというストリートビューよりはるかに細かい単位で高精細な撮影を行う。3次元の空間情報データの作成が、従来の手法に比べ10分の1以下のコストでできるのも特徴だ。

 このデータがあれば、実際にその場にいなければできないことを、バーチャルで行うことができる。

 例えば施設の維持管理であれば建物や柱などの構造物を3次元モデルで確認し、日照によって影の位置がどう変わるかのシミュレーションを行うことも、道路幅や看板、電柱などの高さや幅などを画面上で計測することもできる(写真)。特定の施設をタップして修繕履歴などのデータベースや、設計図、顧客の効率的な巡回ルートなどを同じ画面上に表示することもできる。

JM(前田建設工業子会社)の3次元GISシステム。画面上での構造物の計測も可能だ

 また、バーチャルで街の中を歩きながら、気に入ったホテルの画像をタップすると施設情報と予約サイトに直接飛ぶなど、3次元画像に各種のGISデータをタグ付けすることができるため、観光情報などのウェブサービスにも応用できる。

 すでに静岡県などがサービスをトライアル採用しているが、既存のクライアントなどにもシステムとして提案していく計画だという。

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