内田樹さん、村上春樹を読むべき理由を教えてください!【前編】

ケトルVol.08は、「村上春樹」特集!
ノーベル文化賞にも最も近い作家の一人と称される村上春樹。なぜこんなにも世界中の人々から愛されているのでしょうか? 思想家・内田樹さんにそんな素朴な疑問をぶつけてみたインタビュー・前編。武道家としても知られる内田さんは、作品内における「身体性」の描写にも信頼を寄せているようです!

誰もが主人公になれる小説です

いきなりですが、なぜ村上春樹の小説は世界中で人気があるのでしょうか?  大の春樹ファンとして知られる思想家の内田樹さん、教えてください!

「村上さんは読者の身体的共感を呼ぶのがうまいですね。情景描写など、視覚情報を伝えるのがうまい書き手はたくさんいますけれど、匂いや触感を文章で緻密に再現できる作家はまれ。 だから、村上さんの小説で登場人物がビールを飲む場面があると、ビールを飲 みたくなるし、パスタを茹でる場面があると、パスタが食べたくなる

『ダンス・ダンス・ダンス』が大好きだという内田さん。「僕も何杯ピナ・コラーダを飲んだことか」と笑います。 たしかに、村上春樹の小説を読んだ後は、無理なお願いに「やれやれ」とつぶやいてしまったり、 世の中のニュースに対して「そういうものだ」なんて言ってる自分がいるかも。

「生まれてから一度も雪に触れたことのない熱帯の人でも、『ダンス・ダンス・ダンス』の冬の札幌の描写を読めば、たぶん空気の冷たさが実感できると思う。日本のローカルな場所について書かれているのに、それが身体的に切迫してくる。だから世界中に読者がいるんだと思います」

圧倒的文章力で読者の共感を呼ぶから、誰もが〝自分のこと〞として読んでしまうのです!

アイロンかけひとつで世界が変わる!

村上春樹の小説に登場する主人公は、みんなとてもきっちりと家事をこなします。例えば、『ねじまき鳥クロニクル』の主人公はアイロンかけの工程が全部で12もあるし、『羊をめぐる冒険』の主人公は山小屋を 6 枚もの雑巾を使って丁寧にワックスがけしてみせます。さらに、『ノルウェイの森』の主人公は大学の寮暮らしにもかかわらず、「毎日床を磨き、三日に一度窓を拭き、週に一回布団を干す」。内田さん、これってなぜですか?

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この連載について

村上春樹が大好き!

ケトル

「無駄に価値がある!」がコンセプトの、雑誌『ケトル』。その毎号の特集をcakesで配信していきます。第8弾のテーマは「村上春樹が大好き!」。村上春樹作品の主人公は優柔不断だって言われることがあるけれど、寄り道して、いろんなモノを受け入...もっと読む

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