第11回】既存の地図業界も興味津々 オープンストリートマップ

世界中の誰もが自由に編集に参加でき、利用できる無料のインターネット百科事典「ウィキペディア」。それと同じように、ネット上の共同作業で「フリー」の世界地図を作り上げようというプロジェクトがある。2004年に英国でスタートした「オープンストリートマップ(OSM)」プロジェクトだ。

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 世界中の誰もが自由に編集に参加でき、利用できる無料のインターネット百科事典「ウィキペディア」。それと同じように、ネット上の共同作業で「フリー(自由かつ無料)」の世界地図を作り上げようというプロジェクトがある。2004年に英国でスタートした「オープンストリートマップ(OSM)」プロジェクトだ。

 「全世界のユーザー(地図編集者)数は年内に100万人を突破する勢い。日本では08年ごろから活動が始まったが、いまやユーザーが数万人規模で、世界のトップ10に入るまで増えた」と、日本での活動を後方支援するオープンストリートマップ・ファンデーション・ジャパン(OSMFジャパン)の古橋大地副理事長が説明する。

 ネット上には「無料」で使用できる地図サービスは多々あるが、ベースとなる地図データは、専門の地図製作会社から購入したものである。その点、製作も使用もすべて「フリー」という世界を目指すOSMは一見、既存の地図ビジネスを脅かす動きにも思えるが、どの企業も存外、このプロジェクトには友好的な態度で接している。

 例えばOSMの地図編集の際に使う衛星写真はマイクロソフトのBingのものを使用しているし(写真)、ヤフージャパンからも地図データの供給を受けている。アップルに至っては逆に、自社の地図アプリの一部にOSMのデータを採用しているのだ。

OSMの編集画面。衛星写真(Bing)を"下敷き"にして、建物や道路をなぞり、名称などを書き込んでいく。(c)OpenStreetMap contributors

 日本で開かれるOSM関連のイベントにはゼンリンをはじめとする地図関連企業の多くが、スポンサーとして名を連ねる。敵視するどころか、むしろ興味深くウオッチしているといった様子なのだ。

 グーグルも、OSMのサーバ購入資金を寄付するなど、協力的な企業の一つだ。実は、何よりグーグル自身が、OSM的な取り組みを進めている。グーグルマップには、ユーザーが道路や建物情報、店舗情報を書き加えていける「マップメーカー」という機能がある(日本はサービス対象外)。日本と違い、基礎的なデジタル地図が整備されていない国では「自分たちの手で自国のグーグルマップを作り上げよう」といった動きが活発化しているという。

 ただしマップメーカーは、ユーザーが編集してもグーグルの認可がないと反映されない。「それだと品質は保てるかもしれないが、更新まで時間がかかる。逆に品質を保証しないOSMだからこそ重宝される場合もあるだろう。例えば『全国のやぶ医者マップ』といった“ネガティブ情報”を扱った地図コンテンツは、商用サイトよりOSMのほうがやりやすい」と古橋副理事長は言う。

 うまく棲み分けできる分野があると直感しているからこそ、既存の地図業界のほうも、OSMの動きには興味津々なのだろう。

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カネを生む地図 10兆円市場の全貌【3】~デジタル地図戦争最前線

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国内10兆円、関連産業を入れれば50兆円に達するともいわれる、デジタル地図市場。そこでは多様なプレーヤーが、それぞれの役割を果たしつつ複雑な「地層」を織りなしている。※この連載は、2012年11月17日号に掲載された特集を再編集したも...もっと読む

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