「おはようございます」
「はようっす」
草加壮太。二十三歳。ゆとり・さとり世代の男子であるが、入社当初から暢気に過ごしてきたゆとり第一世代の美沙とはまた違っていた。口調はイマドキの割に、妙な貫禄を持ち合わせている。
草加のPC画面にはフェイスブックが開かれていた。見たくもないのに視界に入るほど堂々と開かれた画面。美沙はやるせない思いでいっぱいになる。
始業時間前だし別に悪いことではないのだが、朝から気が滅入ってしまう。せっかくフェイスブックへログインをしないと決めたのに、迷いが生じてしまうではないか。
とりあえずパソコンの電源を入れ、ホワイトボードの日付を書き換えるも、一度生じた迷いはなかなか姿を消してはくれなかった。
席へ戻ると、ククッと声を漏らしながら草加がキーボードを叩いていた。
イカンイカン、こんなことで動揺しているようではイカン。そう言い聞かせてみたものの、気付けばDEAN&DELUCAのトートバック(財布・化粧ポーチ・携帯電話が常備されているオフィス用バックだ)から携帯電話を取り出していた。草加の画面に引かれるように、美沙もログイン画面を開く。新着メッセージは……。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。