サンデルとピケティのあいだにはカバディがある
「ピケティ、ピケティ、ピケティ……」と連呼しながら、攻撃側の1人が守備側のコートに入り、守備側の誰かにタッチして自分のコートに戻ってくることでポイントを得るインドの国技。1990年からはアジア競技大会の正式種目となっている鬼ごっこのようなこのスポーツは、ピケティではなくてカバディだった。「カバディ ピケティ」でツイート検索すると、「ピケティってカバディみたいwww」というつぶやきが散見される。このつぶやきは、巻き起こるピケティブームの性質を見通す上では外せない。
ピケティ、という響きの良さ。先ごろ来日してから、ますます話題になっている経済学者のトマ・ピケティが、もしもトマ・ゴンザレスという名前だったら日本でここまで流行らなかったかもしれない。マイケル・サンデルだって、もしもマイケル・クリステンセンという名前だったら、これからの正義の話はあんなにできなかったかもしれない。ピケティ、サンデルという端的な名前、そして効果的な濁音・半濁音のアクセント。冷静と情熱のあいだには結局何があるのか分からなかったけれど、サンデルとピケティのあいだにはカバディがある。つまり、連呼したくなる「日本語」として、これらは連関している。
このブームは「あやかろう」という言葉に集約されている
日本で13万部を突破したトマ・ピケティ『21世紀の資本』(みすず書房)、その隣には「60分でわかる」という解説書と、「20分でわかる」という経済誌の特集が並んでいる。そのうち、5分でわかったり、マンガでわかったり、公開霊言で下ろされたりするのだろうが、分厚い本が必死にほぐされていく様子を眺めていたら、新聞記事(朝日2/3)に「ピケティ氏にあやかろうとしているのは、アベノミクス批判を展開する民主党だ」との文言を発見。この「あやかろう」という言葉に今回のブームが集約されている。あやかった民主党に対して、安倍首相も「ピケティ氏も経済成長を否定していない。しっかり成長して果実がどのように分配されるかが大切」とあやかり返してみせた。
読破した役員(60代)に感化された部長クラス(50代)が買う本
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