電柱と連動した地図で
異彩を放つ
「高台なのか、浸水した地域なのかが区別できない。早く地図と写真を用意してくれ!」
2011年3月、東日本大震災の発生直後、NTT空間情報の猪瀬崇社長の元に、ヘリコプターで被災地を視察したNTT東日本の江部努社長(当時)からそう電話が入った。
猪瀬社長は緊急対応部隊を設け、衛星写真を用意し、自前の地図に昼夜問わず浸水エリアを書き込んでいった。縮尺は5000分の1まで詳細に示して、NTT東の設備情報も地図に載せた。
現地に入ることもままならない中、電柱や伝送路の場所と浸水エリアを重ね合わせた地図ができたことで被害状況の把握に成功。その後の人員配置や資材調達に一役買ったのだった。
東日本大震災の被災地の地図に、ピンク色の浸水域と青点の設備情報を重ね合わせ、被害状況を特定した
もともとNTTは2000年ごろから、電柱や電話工事に必要な図面を作るために国の提供する基図から自前の地図を製作してきた。その情報を生かそうと05年に外部販売を始め、11年に別会社化したのが、NTT空間情報である。
空間情報の地図の力は、業界内において予期せぬ相手、“伏兵”と捉えられている節がある。
なぜならば、地図のカバー範囲が広いからである。空間情報の地図は、航空機から撮影した写真と衛星写真を組み合わせて作られる。航空写真だけで、日本の国土約37万平方キロメートルのうち実に8割以上となる31万平方キロメートルをカバーしているのだ。
このため、他社製の地図では表示されないような山間部の集落の情報まで保有している。実に最大25センチメートル四方まで見え、「マンホールの形」もわかるのだ。しかも毎年約5万平方キロメートルずつ更新し、最新版を提供するようにしている。
つまり、グーグルマップなどでは表示されない山間部といえども、電柱が置かれている場所であれば詳細な地図情報があるのだ。そのため、地震や台風など災害時に特に力を発揮している。
とはいえ、消費者になじみが薄い後発参入者がはたして他社に勝てるのだろうか。
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