2010年代のベストSFは?【国内篇】

毎年2月、『SFが読みたい!』誌上にて100名を超えるプロの投票によって決定されるベストSF。『マルドゥック・スクランブル』『新世界より』『ハーモニー』――ゼロ年代には、今も語り継がれる様々な国内SFが第1位の栄冠に輝いてきました。では、2010年代にはどんなSFが現れてきたのか? 2月10日のベストSF2014の発表に合わせ、2010年~2013年のベストSFをガイドします。

ベストSF2010

『華竜の宮』
上田早夕里


ハヤカワ文庫JA

海洋/冒険/終末──
日本SFの正統に連なる傑作

 圧倒的な得票数で2010年の1位を獲得したのは、海洋/冒険/終末SF……といくつでも冠をつけられる上田早夕里の本格SF大作。舞台は、2009年度4位に入った短篇集『魚舟・獣舟』の表題作と同じく、海面が著しく上昇した25世紀の地球。人類は、社会制度はもちろん、遺伝子操作によって自らの身体をも改変することで、環境の激変を乗り越えてきた。その過程で、人々は大きく分けてふたつのグループ──残された陸地で暮らす陸上民と、巨大な生物船“魚舟”に乗って海で生活する海上民──に分裂。気風の違いや限られた資源をめぐって両者の対立が深まるなか、外交官の青澄誠司は調整役として奔走するが、地球内部では新たな大災害へとつながる異変が起きようとしていた……。

 陸と海の間に立つ外交官を主役に据え、対立する相手や迫り来る危機をねじ伏せるのではなく、いかに受け入れるかを全力で模索する物語は、懐が深く静かな迫力に満ちている。リアリティのある設定と豊かなイマジネーションが、絶妙のさじ加減で混じり合う未来像も素晴らしい。「世界沈没」とでも言うべきスケールの大きさやインサイダー的な視点の取り方からは、さまざまな第1世代作家の名前も思い浮かぶ。日本SFの正統に連なる傑作だ。

(香月祥宏)


べストSF2011

『これはペンです』
円城塔


新潮文庫

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毎年2月、小冊子『SFが読みたい!』誌上にて100名を超えるプロの投票により決定されるベストSF。国内小説・海外小説ともに、ゼロ年代に今も語り継がれる様々なSFが第1位の栄冠に輝いてきました。では、2010年代にはどんなSFが現れてき...もっと読む

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コメント

FEO9000 【コラム】 4年以上前 replyretweetfavorite

FEO9000 【コラム】 4年以上前 replyretweetfavorite

adax19 なんか全然普通のランキングで少し期待はずれかつ各年ベストだけというのも 5年以上前 replyretweetfavorite

obakemogura ベストだけ並べるの、どうかと思うな。> 5年以上前 replyretweetfavorite