それでも僕は、外科医をやめない

苦手なナースを克服した話

今回の雨月先生は、職場で大変な思いをした経験から、人付き合いのヒントについてお話します。医者といえども、勤務医はサラリーマン。職場での人間関係はやっぱり悩みの種です。

こんにちは、外科医の雨月メッツェンバウム次郎です。

仕事をしていて、イヤな上司や同僚と我慢しながら毎日顔を合わせる。こんな経験って、誰にでもあると思います。
そう、私にもいました、イヤでイヤでしょうがない看護婦さん。

私が医者になって3, 4年目くらいの頃でしょうか。医者の世界では、まだ駆け出しのペーペーです。

その人は手術室の看護婦さんだったのですが、とにかく、あらゆる意地悪を私はされているように感じていました。手術前に私が準備しておいた手袋や、上司に言われて準備しておいた物品を私の知らないうちにどこかにやってしまったり。

手術中に、私が「クーパー(はさみのことです)」とか「3-0(糸のことです)」とか言っても、聞こえないフリをしてすぐに渡してくれません。そのせいで私は上司に毎回「なにボケッとしてんだっ!早く切れっ!」なんて調子でしかられ、「手術中に手がすばやく動かない、不器用なヤツ」というレッテルを貼られてしまい、色んな手術の執刀チャンスを失ってしまいました。

しかも困ったことに、そのナースは、本来は手術の介助の上手なナースで、ナース間でも外科医からもとても評判がいい。特に私のボスからは大きな信用を得ていたんです。こうなると私にはまったく勝ち目がない。私の評価は下がる一方です。

若い外科医って、上司の評価ひとつで手術を執刀出来るかどうかが決まり、ひいては外科医としてのウデの良さも決まります。私は自分の外科医としてのキャリアが閉ざされてしまったような、そんな気さえしました。

当時は何が原因で嫌われたのかわからないまま、もやもやとした気持ちをずっと抱えていました。手術の実力以外の部分で、自分の足を引っ張られるのは本当に嫌な気持ちでした。私はそのナースを避けるようになり、廊下であっても挨拶一つせず目もあわせず、なるべく近づかないようにしました。

そのナースが手術の「機械出し」(手術に実際に参加して外科医に道具を渡す人のことです)の時は本当に憂鬱で、その日の朝にはお腹が痛くなったりしていました。そして私からは手術執刀の機会が全くなくなりました。

そんな日が3ヶ月くらい続いたでしょうか。悶々とした日々。

私は本当に悩みました。毛糸の玉のように、ごちゃごちゃにこんがらがったこの問題をどうすれば解きほぐせるのか。

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それでも僕は、外科医をやめない

雨月メッツェンバウム次郎

高学歴エリート集団だと思われがちな外科医の世界は、実は、毎日人を切り刻んでる特殊な世界です。現役医師が語る外科医の世界は、とっても不思議な世界。毎日、さまざまな患者さんと接し、手術をするなかで感じたことを、ありのままに語ります。not...もっと読む

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コメント

ika_tarou これよかった。 3年以上前 replyretweetfavorite

denshion1 "私はいつも、「あの人は私に声をかけられるのを待っている」と思うようにしています。理由ですか?だって、私もそうなのですから。" 5年弱前 replyretweetfavorite

ugetsujiro 新記事「」をアップしました。本当に苦手で困りきった経験、なんとかなったこと。 |雨月メッツェンバウム次郎| 5年弱前 replyretweetfavorite