引き寄せの法則の真実

引き寄せの法則の正体を教えると言われた2日後、ふたたび面談を迎えた美沙は自分の感じている思いを上司の坂井にぶつけた。しかし、坂井は冷静沈着に「引き寄せの法則」の真実を美沙に告げる。それは、甘くもなく辛くもなく、ただ動かしがたい真実のような気がした。この小説は、1人の崖っぷちOLが会社を変えるまでを描いたビジネス小説です。

引き寄せの法則の正体。「考えてみてください」と言われたからには、回答を用意しておかなければならないのだろう。二日置きに面談とは常に監視をされているようで辟易としたが、美沙は正体を暴くべく、面接までの二日間はとにかくスピリチュアルと呼ばれる類の書籍を読みあさった。

“心は、創造の達人です。そして、私たちは心であり、思いという道具をもちいて自分の人生を形づくり、そのなかで、さまざまな喜びを、また悲しみを、みずから生み出しています。私たちは心の中で考えたとおりの人間になります。私たちを取りまく環境は、真の私たち自身を映し出す鏡にほかなりません”

『「原因」と「結果」の法則—ジェームズ・アレン』。

そしてまた不本意にも去来する追憶。

「なぁに、あれ?」

『人生とは今日一日のことだ。あなたが確実に生きられる唯一の人生は、今日なのだ』

「あぁ、あれはデール・カーネギ―の言葉だよ。毎朝起きて一番に目にする言葉。あの言葉をしっかり胸に刻んで毎日を精一杯生きたい。そう思っているんだ」

コウスケが友人から恋人へと変化したあの夜。ワンルームの小さな部屋の低い天井に貼られていたポストイット。コウスケの腕に包まれながらあの言葉を目にした瞬間、全身が総毛立ち、五感という五感が圧倒され打ちのめされたのだ。

そしてあくる日から、コウスケの部屋の本棚に羅列された書籍を片っ端から読みつくした。いわゆるスピリチュアル・哲学書という類の書籍だ。そこで出逢ったあらゆる法則に、美沙は魅せられていた。そう、まさにこのときに思ったのだ。魔法を手に入れた、と。

“やがてあなたの手には、あなた自身の思いの結果が、そのままもたらされることになります。あなたはやがて、あなたが受け取るにふさわしいもの(それ以上でも、それ以下でもないもの)を手にすることになるでしょう”

『宇宙の法則・引き寄せの法則(自身の思考の波動をとおし、さまざまなものを人生に引き寄せ、創造するというもの)』は絶対である。自分自身で運命は変えられる!

それから美沙は、運命の人コウスケと幸せになることを確信して生きてきた。笑顔とプラスの言葉を欠かさず、コウスケに相応しい人間になれるよう努めてきた。それなのに……。

今は自身でも何が正しいのかわからなくなっていた。天職を見つけて仕事に生きる! そう新たに決断をしたけれど、自分探しを始めてからというもの、以前にも増して自身を見失っている気がしてならない。この単純な法則にも自信が持てなくなっていた。鬱屈とした思いが美沙の心を支配する。

そしてあっという間に二日間は過ぎ去った。美沙は重い鉛を胸に抱えたまま、ダンジョンのような中会議室へと向かった。

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