第2章 世界でいちばん言いづらい言葉
──「知らない」を言えれば、合理的に考えられる
次の短い話を聞いて、質問に答えてほしい。それじゃどうぞ。
メアリーという女の子が、お母さんとお兄さんと一緒に海に行きました。赤い車に乗って行きました。海に着いたら、みんなで泳いでアイスクリームを食べて、砂遊びをして、お昼にはサンドイッチを食べました。
では、質問。
1.車は何色でしたか?
2.昼食にフィッシュ・アンド・チップスを食べましたか?
3.車のなかで音楽を聴きましたか?
4.食事と一緒にレモネードを飲みましたか?
お疲れさま、どうだった? ある研究者のグループが、イギリスの5歳から9歳までの小学生に同じ質問をした。小学生の答えとあなたの答えを比べてみよう。最初の2つの質問は、子どもたちのほぼ全員が正解した(「赤」と「いいえ」が正解)。でも3問めと4問めはずっと成績が悪かった。なぜか? この2つの問いは答えられない質問なのだ——話を聞くだけでは十分な情報が得られない。
それなのに、なんと76%の子どもたちが、「はい」か「いいえ」で答えたのだ。
こういう簡単な質問をハッタリで切り抜けようとする子どもは、実業界や政界で成功する素質十分だ。何しろああいった世界では、何かを「知らない」と正直に認める人なんてほとんどいないのだ。昔から英語でいちばん言いづらい3つの言葉は「アイ・ラブ・ユ ー」だと言われてきた。でもそうじゃないと、心から叫びたい!
「アイ・ドント・ノー」と言うほうが、ほとんどの人にとってはずっと難しいのだ。これは残念なことだ。自分が何を知らないかを認めないかぎり、必要なことを学べるはずがないのだから。
あなたは「知っている」と思い込んでいる
どうしていつも知ったかぶりをしてしまうのか——そしてその結果どんなツケが回ってくるのか、どうすれば知らないと言えるようになるのか——をくわしく説明する前に、まず「知っている」とはどういうことなのかを、はっきりさせておこう。