0ベース思考—どんな難問もシンプルに解決できる

次期首相に提示した「思考実験」

客観的に見れば正しいことでも、主観や道徳によって誤った判断をしてしまいます。国民健康保険が大きな負担となっているイギリスは、なぜその問題を解決しようとしないのでしょうか? 絶対に触れられたくない「タブー」を突かれた時、あなたはどう対応しますか?
『ヤバい経済学』
で世間をあっといわせたシカゴ大の鬼才教授の「どんな問題にも一発で本質に切り込める」思考法を紹介した一冊、『0ベース思考』(ダイヤモンド社)よりお届けします。

本当のことを言うと「変人扱い」される

 もちろん、フリークみたいに考えたい人ばかりじゃないだろう。デメリットもいろいろ考えられる。主流から遠く遠く外れるかもしれない。気まずいことを言ってしまうかもしれない。気さくで感じのいい3人の子もちの夫婦に、「チャイルドシートは時間とお金の無駄ですよね」と口走ってしまう(少なくとも衝突試験のデータはそう示している)。

 新しい彼女の実家の夕食会に招かれて、「地産地消運動はかえって環境に悪いんですよ」と一席ぶってから、彼女のお父さんが筋金入りの地産地消主義者で、食卓の何もかもが半径80キロ圏内で生産されたものだと知る。

 変人扱いされたり、人でなしと呼ばれたり、席を蹴って部屋を出て行かれることにも慣れなくちゃいけない。これはぼくたち自身、じかに経験していることだ。

『超ヤバい経済学』を出してすぐプロモーションでイギリスを訪れたとき、その後まもなくイギリス首相になったデイビッド・キャメロンに呼ばれて会いに行った。

 彼のような立場の人にとって、ぼくたちみたいな人間にアイデアを求めるのは珍しくないんだろうが、当のぼくたちはお招きを受けてびっくりした。だって『超ヤバい経済学』 では、政治家が躍起になって操作しようとする、インフレやら失業やらのマクロ経済要因のことはほとんど語れないと、しょっぱなからぶちかましていたんだから。

 それだけじゃない。ややこしい問題には立ち入らないのが政治家の鉄則だというのに、『超ヤバい経済学』はイギリスで早くも物議を醸しまくっていた。

 全国放送のテレビに出演したときなんか、ぼくたちがテロ容疑者をつきとめるためにイギリスの銀行とつくったアルゴリズムを説明した章のことで非難が殺到した。テロリストが検知をすり抜けるのを手助けするような情報をうっかり公開するなんて、いったいどういうわけなんだと、インタビュアーにぎゅうぎゅう問い詰められた(当時は質問に答えられなかったが、この本の第7章にその答えがある。ヒント:うっかり公開してなんかいない)。

 それに、一般的な地球温暖化対策には意味がないと書いたことでも顰蹙(ひんしゅくを買っていた。 実際、ぼくたちを迎えに来てくれたロアン・シルヴァという、キャメロンの腹心の若いキレ者の政策顧問は、近所の書店には『超ヤバい経済学』を置いていないと教えてくれた。 地球温暖化の章が書店の主人のお気に召さなかったらしい。

「道徳のコンパス」が判断を狂わせる
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スティーヴン・レヴィット /スティーヴン・ダブナー /櫻井祐子

「ワールドカップのPKはどの方向に蹴ると入りやすい?」、「彼女とは別れた方がいい?」、「公共政策は何をすべき?」日常のお悩みも、世界を変えるかもしれない大問題も、合理的に考えれば「こっちが正解」なのに、なぜわたしたちは「正解じゃない方...もっと読む

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daiking0925 "...誰もが、とくに政治家が、道徳のコンパスをもとに決定を下すようになると、事実が真っ先に闇に葬られる" 5年以上前 replyretweetfavorite