vol.3 なぜ人は「廃墟」にひかれるのか?

『世界の廃墟』『奇界遺産』など、世界の知る人ぞ知るスポットに果敢に挑んでいる佐藤健寿さん。いったいそのバイタリティーはどこから来ているんでしょうか? そしてそうした写真集に人々が注目している理由とは? 佐藤さんのこれまでの冒険譚も披露される、インタビュー最終回です。

「美しい」は無意味なコピーになっている

— 「廃墟萌え」という言葉もあるように、日本の廃墟ブームには、いい意味でも悪い意味でも、廃墟をカジュアルに受け止めるところがあると思います。佐藤さんのお話を聞いて、廃墟を「美しい」と感じていいのか、抵抗も出てきました。


ブルガリア共和国バズルージャの共産党ホール

佐藤健寿(以下、佐藤) 「美しい」という言葉を無邪気に使うことにはずっと疑問を感じています。でも、今って「絶景」とか、「美しさ」をフィーチャーした写真集が売れていますよね。今回の本も「世界の美しい廃墟」という切り口とタイトルで出そうと思えば出せたと思います。実際、最初に企画を頂いたときはそういう仮タイトルがついていました。

— それはそれでありそうですね。

佐藤 でも結果的には『世界の廃墟』というタイトルで行くことにしました。それはなにより「福島」の存在が無視できないから。原発事故によって人が立ち入りできなくなった区域には今「廃墟」ができつつありますよね。で、その現状をひっくるめた上で廃墟を「美しい」って言えるかどうか考えたら、やっぱり言えない。想像力の問題で、美しいという言葉は出版界でいまほとんど無意味なコピーのように乱用されているけど、作る側も買う側もものすごく思考停止していると思います。それはまた別の問題かもしれませんが。「廃墟」が身近な問題としてあって、それを美しいと捉えられない人は確実に存在する。仮にそういう人を前にしても「美しい廃墟」という本を出しました、と言えるかといえば、僕は言えないなと思った。

— はい。

佐藤 だけど、じゃあ廃墟は「美しくない」のかというと、そういう意味ではない。容易に「美しい」という言葉を前面には出したくないんだけど、僕にも、多くの人にも、廃墟を「美しい」と思う感性が存在している。では、どうして我々はそういうふうに感じるのかというところを考えることから、本を作る作業がはじまったともいえます。今回の本では、そういう廃墟の多面性が伝わるように気を配りました。


チェルノブイリ事故で無人の街となったプリピャチ(ウクライナ)市内の病院にて。

奇界遺産旅行に危険はつきもの

— よく考えたら、ベストセラーになっている『奇界遺産』も、「美しい絶景」ブームのようなところとは一歩距離をおいていますよね。

奇界遺産
奇界遺産

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廃墟とアーバン・エクスプロレーションの現在—『世界の廃墟』インタビュー

佐藤健寿

世界中の知られざる新奇な場所・モノ・人を取材した写真集『奇界遺産』『奇界遺産2』がベストセラーとなっている佐藤健寿さん。監修をつとめた新刊『世界の廃墟』はその名の通り、世界各地の廃墟を紹介する写真集です。日本でも認知されている「廃墟」...もっと読む

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コメント

ora109pon なぜ人は「廃墟」にひかれるのか? | 約4年前 replyretweetfavorite

46moo96moo 「『美しい』は無意味なコピー」昨日の廃墟カフェ記事に感じた違和感は正にこれ☆→ 約5年前 replyretweetfavorite

kohashi イジェン火山て初めて知った。すごい。 > 青い溶岩!?幻想的すぎる!美しくも危険なイジェン火山 - NAVER まとめ http://t.co/o9hUzPTsTG(via なぜ人は「廃墟」にひかれるのか? https://t.co/82OenHmpk3) 約5年前 replyretweetfavorite

hirarisa_ 今回は、原発事故などの廃墟を「美しい」と言っていいのか問題、最近の「奇界遺産」ブームの理由、佐藤さんの危機一髪体験、「死ぬまでに行きたい」ではなく「行くまでに死ぬ」絶景、などなどです https://t.co/3uvFO0tqiT 約5年前 replyretweetfavorite