今回ご紹介するのは、「秀島康右」さんのコラム、「良い商標を持っていないマイナス要因は、あとでボディーブローのように効いてくる。」。
ひとつ5kgのカンパーニュを切り分けるという独自のスタイルからスタートした岡山発のパン屋「ナショナルデパート」。秀島さんはその代表です。今では「ももたん」という岡山のおみやげも手がけ、味はもちろん、かわいらしいキャラクターデザインで人気を得ているのだとか。
多くの商品がある中で消費者の方に選んでもらうために、味とデザイン以外に重要なのが、「商標」だと語る秀島さん。はたしてその理由とは?
以下、note より転載です。
良い商標を持っていないマイナス要因は、あとでボディーブローのように効いてくる。
自社製品を開発、製造しているのに、自社製品の商標を登録してない会社って多いと思う。
また、商標を登録していたとしても、あまり良い名前ではなかったために市場の中でポジションを得られない事例もあったりする。
カテゴリーが製品の機能や製造技術を特異なものとして差別化ができているなら、とくに製品の名称などの及ぼす影響は軽微なのかもしれないけど。
競合ひしめく市場に参入する場合、消費者をキャッチするのに必要なのは
1.デザイン
2.機能
3.商標
この三つだと思ってる。(順不同ね)
結果としての販売の強化の方法として、営業偏重の戦術なのか、製品開発の戦術なのか、その違いで企業の商標に対する考え方が異なると思う。
とにかく営業担当者を増やして取引先に毎日のように顔を出させる、取引先にオッサンが多ければ、営業は田舎っぽい若い女を置いておく。
という考え方もある。じつはこれがかなり効果がある。それが現状だったりする。
営業出身の経営者は製品開発を疎かにしている場合が多い。営業出身の経営者は製品のことを「売上を出すためのツール」だと認識している。
だから、営業出身の経営者の製品開発は、品質の向上よりも市場性に重きをおく。
自社製品のポジショニングの考え方も、ニッチに走りやすい。
市場性をキャッチして製品を投入するから、市場に対する即効性は強いが、消費者の反応が鈍くなるのも早い。
僕の業界で言うなら、たとえばSC(ショピングセンター)内のテナントが並んでいる中で、消費者の頭の中ではこうつぶやかれている。
「チョコレートもいいなあ、あ、ウエハースもあるんだ、う〜ん、豆菓子もいいかもね、ゼリーもいいなあ、マドレーヌなんかどうかしら…」
営業出身の経営者は売れ筋の商品カテゴリーの中で自社製品を展開する事が多い。そのほうが売れやすいからだ。
でも、自社製品が消費者の頭のなかでカテゴリー名で認識されている場合は、もはやそれをブランドとは呼ぶことが出来ないと思ってる。
もし、同商圏の中に同カテゴリーの強力な商品を持つ他者が進出してきたらどうだろうか。
そういえば、ウチの店の前で必ずお客さんが言う言葉がある。
「あ、ももたん!」
ウチの製品を見てカテゴリーを連想する客はいない。
そもそも何の菓子カテゴリーなのか、それがどういうものなのか、まったく知られていない。でも、客は思わず商品名を口に出してしまう。
これが強力な商標を持つということだと思ってる。
転載元:秀島康右「良い商標を持っていないマイナス要因は、あとでボディーブローのように効いてくる。」(2015/01/21)