正月に「すき焼き奉行」に変身する三重県民
松浦 いやあ、まさかすきやき鍋を忘れるとは。どうも重いものを預かっていただいてしまって申し訳ありません。しかも取りに伺うついでに図々しく対談までお願いしてしまって。
石原 いえいえ、とんでもない。こちらこそ新年会では重い鍋までお持ち頂いて、ありがとうございました。
石原 えーと。絵作り用の小芝居はこんな感じでいいんでしょうか。
松浦 はい(笑)。一応、すき焼き鍋を置き忘れたのは事実だということを申し添えつつ、ゆるやかに本題に参りましょう。それにしても、石原さんの事務所で行われるすき焼き新年会、すっかり年中行事になりましたね。
石原 仕切りは、神田(憲行)さん(※1)ですけどね。
松浦 確かに「新年会をやろう!」と言い出すのは神田さんですが、石原さんも鍋まわりの仕切りは絶対に譲らないじゃないですか。
石原 三重県民、とりわけ僕のような松阪市出身者にとってすき焼きは特別な食べ物なんです。前日に買い出しの話になって、「肉も、野菜といっしょに近くのスーパーで買えばいいのでは」という案が出たときには、息を激しく吸い込みました!
松浦 石原さんが「ダメです! それはすき焼きに対する冒涜です!」とバッサリ(笑)。
石原 大事なことですから、もう一度言います。それはすき焼きに対する冒涜です!
松浦 新年会のすき焼きの場は「丸くおさめる」「大人力」で知られる石原さんが珍しく強い調子に豹変される場として、楽しませていただいています。
石原 今年も最初の一枚を女性陣が「お先にどうぞ」なんて譲り合っているのを見て、つい声を荒らげてしまって……。
松浦 「どっちでもいいから、早く!」と。「お先にどうぞじゃねえ。俺が食えと言ったこの瞬間に食え!」と。
石原 後者は言ってません(笑)。
松浦 でもそういうことですよね(笑)。最初の一枚に至るまでの準備段階でも、「いいからまず座って!」「早く卵を溶いて!」と有無を言わせぬ勢いで場を切り回して、直に焼いてくださる。
石原 お、お恥ずかしい……。
※1ベストセラー『「謎」の進学校 麻布の教え』(集英社新書)などの著者であるノンフィクションライターの神田憲行さん(向かって石原さんの左隣)。石原壮一郎さんとは四半世紀に渡る付き合い。
正月に肉屋に行列!?
松浦 いえいえ、あの姿はおよそ石原さんらしくなくて何度拝見しても新鮮です。でも石原さんにとって「正月のすき焼き」はそれほど特別なものなんですよね。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。