第9回】グーテンベルク・ガール

WEB系文化系女子okadaicこと岡田育による、カリカリのパンのはじっこのような味わい深い日常エッセイ。年内最後の今回は、岡田さんが編集者という仕事を選んだ理由を明かす内容となっているようにみえますが……いやいや、最後まで読んでみてください。

 本を作るのが好きだ。

 そう言うと、人は大抵、本を「書く」のが好きだという意味に勘違いする。それが証拠に、ほとんど必ず「どんなものを書かれるんですか?」と質問が返ってくる。「なんか有料サイトでエッセイみたいなの書いてますもんね」「ずっと作家になりたかったんですか?」などとも言われる。その勘違いは、半分合っていて、半分はずれている。「本を書く」と「本を作る」の間には、狭くて深い溝があるのだ。

 中学高校の6年間、私は文芸部に所属していた。他校における文芸部に相当する部活なので人には「文芸部」と説明するが、正式な名称や活動内容は少し異なる。詩や小説を書いて合評したり同人誌を作ったり、布製の仕掛け絵本や子供に読み聞かせる紙芝居を作ったり、切り紙のステンドグラスや粘土の立体で文化祭の展示を作ったり、牛乳パックで手漉き和紙を作ったり、時には現代の錬金術師を気取ってスライムを作ったりもする。フィクショナルでファンタジックな「物語の世界」をひたすら手作りで表現することにこだわった、不思議な部活動だった。

 今思えば、あの部活もまた、学園の中で「ハジ」に位置するものだ。漫画研究会や、映画研究会や、美術部や、手芸部ならば、表現の手法と範疇がじつに明確である。しかし我らが文芸部には、そうした部活のどれからもこぼれたようなメンバーが、別々の風に吹き寄せられて集まっていた。国語科の教師を顧問に迎えて「他部ではできないこと全般」を好き放題にやる、文化系の中の文化系とでも呼ぶべき究極のハジっこサークルだった。名を「創作同好会」という。

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ハジの多い人生

岡田育

趣味に対する熱量の高いツイートと時事に対する冷静な視点でのツイートを自在に繰り出すWEB系文化系女子okadaicこと岡田育。 普通に生きているつもりなのに「普通じゃない」と言われ、食うに困らず生きているのに「不幸な女(ひと)」と言わ...もっと読む

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hidekih “12月31日(月)コミックマーケット83” なまOkadaicを見に行こうかと思ったら、1年前のイベントなんだ。 4年以上前 replyretweetfavorite