本を作るのが好きだ。
そう言うと、人は大抵、本を「書く」のが好きだという意味に勘違いする。それが証拠に、ほとんど必ず「どんなものを書かれるんですか?」と質問が返ってくる。「なんか有料サイトでエッセイみたいなの書いてますもんね」「ずっと作家になりたかったんですか?」などとも言われる。その勘違いは、半分合っていて、半分はずれている。「本を書く」と「本を作る」の間には、狭くて深い溝があるのだ。
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中学高校の6年間、私は文芸部に所属していた。他校における文芸部に相当する部活なので人には「文芸部」と説明するが、正式な名称や活動内容は少し異なる。詩や小説を書いて合評したり同人誌を作ったり、布製の仕掛け絵本や子供に読み聞かせる紙芝居を作ったり、切り紙のステンドグラスや粘土の立体で文化祭の展示を作ったり、牛乳パックで手漉き和紙を作ったり、時には現代の錬金術師を気取ってスライムを作ったりもする。フィクショナルでファンタジックな「物語の世界」をひたすら手作りで表現することにこだわった、不思議な部活動だった。
今思えば、あの部活もまた、学園の中で「ハジ」に位置するものだ。漫画研究会や、映画研究会や、美術部や、手芸部ならば、表現の手法と範疇がじつに明確である。しかし我らが文芸部には、そうした部活のどれからもこぼれたようなメンバーが、別々の風に吹き寄せられて集まっていた。国語科の教師を顧問に迎えて「他部ではできないこと全般」を好き放題にやる、文化系の中の文化系とでも呼ぶべき究極のハジっこサークルだった。名を「創作同好会」という。