松岡正剛が小説を書かないのはなぜか

"知の巨人"松岡正剛さん。名高い編集工学者に、「松岡正剛は謎だらけ」「どうして松岡さんは答えを教えてくれないのか」と、cakesでもおなじみの作家・海猫沢めろんさんが切り込みました。
第3回は、松岡さんが、物語について語りつつも自ら小説を書かない理由を尋ねました。「問い」を編集し続けるというスタンスと、死後に公開される一千枚のテキスト「秘伝書」とは?

終わることより終わらないことに魅力がある

— 松岡さんは昔から色々なところで、「物語を作りたい」と仰ってたり、物語論について語ったりされてましたが、ずっと実際の創作はされませんでした。どうしてなんでしょうか?

松岡正剛(以下、松岡) どうしてかわかる?

— やはり知識が増えれば増えるほど完璧主義になってくるので……、失敗が怖いというのはあるのかなと。

松岡 経済評論家が起業してすぐ潰れるみたいなね(笑)。それもありますが、24、5のときに僕は作詞作曲やってたんですけど、やってみてから「しまった」と思ったんですよ。「止めないとまずいな」って。それでやめてるんですね。

— たしか、物語というか、歌舞伎も作られていましたよね。

松岡 若い頃にね。でもね、やっぱりこれもストップをかけましたね。僕はこっちへはいかないほうがいいなと思いましたね。

— それはどうしてそう思ったんでしょうか?

松岡 創作の内容よりも、そこで何かが入れ替わったり、投影されたり、変換されるといった、編集プロセスの方にものすごい魅力を感じるんですね。

— やはりそこなんですね。

松岡 僕はデザインなんかも嫌いじゃないけど、デザインって定着してしまうもので、フィニッシュがあるんですよ。編集って言うのはフィニッシュがないので、そういうことをしたい。

— フィニッシュがないもの、ですか。

松岡 小説や物語はピリオドがあるから、ある種の回答でしょ。でも、そもそもの問いのほうに、答えを超えたものがあるんです。

— 問いを編集し続けるほうがおもしろいと思ったということでしょうか。

松岡 そうです。僕の役目ってお題を出すほうだと気づいたんだと思います。だから、小説とか、あるフォーマットに向かうっていうことは滅多にしない。

— うーん。松岡さんのその、答えに向かわないスタンスについては、あとで聞きたいことがあるんですが、今は話を先に進めましょう。その、「問い」について、なにか形にする予定はあるんでしょうか?

秘伝書

松岡 実は、僕が死ぬまでは世の中に発表しないもののなかに、用意してあります。

— そのなかには小説も?

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謎めく賢者の告白—松岡正剛インタビュー

松岡正剛

「知の巨人」と呼ばれ、雑誌『遊』やブックレビューサイト『千夜千冊』など、いつも新しい場を構築してきた編集工学者・松岡正剛さん。「謎の多い賢者のよう」「松岡さんは答えを教えてくれない」と話す作家の海猫沢めろんさんが、松岡さんが手がけたス...もっと読む

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コメント

m_sorahito 問いの方が面白いか。> 2年以上前 replyretweetfavorite

rashita2 "中途半端っていうものの良さはそこにあるんですね。みんな、脇見をもっとしたほうがいい。 " 2年以上前 replyretweetfavorite

monnanasan 後でちゃんと読もう。ざっと読んだだけでメモしたい言葉の嵐。→ 2年以上前 replyretweetfavorite