終わることより終わらないことに魅力がある
—— 松岡さんは昔から色々なところで、「物語を作りたい」と仰ってたり、物語論について語ったりされてましたが、ずっと実際の創作はされませんでした。どうしてなんでしょうか?
松岡正剛(以下、松岡) どうしてかわかる?
—— やはり知識が増えれば増えるほど完璧主義になってくるので……、失敗が怖いというのはあるのかなと。
松岡 経済評論家が起業してすぐ潰れるみたいなね(笑)。それもありますが、24、5のときに僕は作詞作曲やってたんですけど、やってみてから「しまった」と思ったんですよ。「止めないとまずいな」って。それでやめてるんですね。
—— たしか、物語というか、歌舞伎も作られていましたよね。
松岡 若い頃にね。でもね、やっぱりこれもストップをかけましたね。僕はこっちへはいかないほうがいいなと思いましたね。
—— それはどうしてそう思ったんでしょうか?
松岡 創作の内容よりも、そこで何かが入れ替わったり、投影されたり、変換されるといった、編集プロセスの方にものすごい魅力を感じるんですね。
—— やはりそこなんですね。
松岡 僕はデザインなんかも嫌いじゃないけど、デザインって定着してしまうもので、フィニッシュがあるんですよ。編集って言うのはフィニッシュがないので、そういうことをしたい。
—— フィニッシュがないもの、ですか。
松岡 小説や物語はピリオドがあるから、ある種の回答でしょ。でも、そもそもの問いのほうに、答えを超えたものがあるんです。
—— 問いを編集し続けるほうがおもしろいと思ったということでしょうか。
松岡 そうです。僕の役目ってお題を出すほうだと気づいたんだと思います。だから、小説とか、あるフォーマットに向かうっていうことは滅多にしない。
—— うーん。松岡さんのその、答えに向かわないスタンスについては、あとで聞きたいことがあるんですが、今は話を先に進めましょう。その、「問い」について、なにか形にする予定はあるんでしょうか?
秘伝書
松岡 実は、僕が死ぬまでは世の中に発表しないもののなかに、用意してあります。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。