突然来店した美しい女性の話
いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。
もう10年ほど前のお話です。初めてお店に来店されたきれいな女性がいました。年齢は25歳くらいで、とても清潔な印象のある方です。
ただ、彼女はひどく酔っているように見えて、とつぜんこんな話を始めました。
「バーテンさん、私、中学から高校までずっといじめられてたんです。そのいじめられたきっかけは、私がすごくブスだったからなんです」
本当にきれいな方だったので、おっしゃってることがいまいち理解できずとまどっていると、彼女は話を続けました。
「ブスっていっても色々と種類があります。例えばブスを売り物にしているテレビのお笑いタレントがいますよね。あんなのまだまだだなって思います」
「ああ、たしかに。大体、テレビに出られるってことは、『ブス』を売りにしていてもどこか花がありますよね。本人に会ったら本当はどこかチャーミングで可愛いんだろうなって思います」
「あるいはこの子はただ太り過ぎなだけで、もう少し痩せたら絶対にもう少し綺麗になるって感じの子もいます。そんな子たちは努力してないだけなんです」
「あとは性格ブスっていうのもありますね。いつも誰かの悪口ばっかり言ってて、何かと悲観的で、そういう方は顔に出てしまうことが多いですよね」
僕はそこまで話してピンときました。そして冗談半分にこう言いました。
「もしかして、そんなに性格が悪かったんですか?」
すると彼女は、即座にこう答えました。
「いえ、私のブスは救いようのないブスだったんです」
彼女が、どこか作り物のような美しい顔から、真剣な目を向けてくるので、僕は言葉に詰まってしまいました。
「物心ついた頃から、自分の見た目はそんなに良い方じゃないんだな、可愛い服とかは似合わないんだなとは思ってたし、母も私に派手な服を着させようとはしていなかったようです。それで私も控えめに、できるだけ目立たないように小さい頃から行動していました。
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