整形美女の嘘

bar bossa店主・林伸次さんのコラム、今回は謎の美しい女性のお話です。今から10年ほど前、初めてbar bossaに来店された、一人のきれいな女性がいました。その女性は突然林さんに、「私、ずっといじめられていたんです」と打ち明け、その理由を「すごくブスだったから」と語ります。美しい外見からは想像できない、女性のいきなりの「告白」に、驚きを隠せない林さん。そしてその女性は、さらに過去を語り出します。

突然来店した美しい女性の話

いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

もう10年ほど前のお話です。初めてお店に来店されたきれいな女性がいました。年齢は25歳くらいで、とても清潔な印象のある方です。

ただ、彼女はひどく酔っているように見えて、とつぜんこんな話を始めました。

「バーテンさん、私、中学から高校までずっといじめられてたんです。そのいじめられたきっかけは、私がすごくブスだったからなんです」

本当にきれいな方だったので、おっしゃってることがいまいち理解できずとまどっていると、彼女は話を続けました。

「ブスっていっても色々と種類があります。例えばブスを売り物にしているテレビのお笑いタレントがいますよね。あんなのまだまだだなって思います」

「ああ、たしかに。大体、テレビに出られるってことは、『ブス』を売りにしていてもどこか花がありますよね。本人に会ったら本当はどこかチャーミングで可愛いんだろうなって思います」

「あるいはこの子はただ太り過ぎなだけで、もう少し痩せたら絶対にもう少し綺麗になるって感じの子もいます。そんな子たちは努力してないだけなんです」

「あとは性格ブスっていうのもありますね。いつも誰かの悪口ばっかり言ってて、何かと悲観的で、そういう方は顔に出てしまうことが多いですよね」

僕はそこまで話してピンときました。そして冗談半分にこう言いました。

「もしかして、そんなに性格が悪かったんですか?」

すると彼女は、即座にこう答えました。

「いえ、私のブスは救いようのないブスだったんです」

彼女が、どこか作り物のような美しい顔から、真剣な目を向けてくるので、僕は言葉に詰まってしまいました。

「物心ついた頃から、自分の見た目はそんなに良い方じゃないんだな、可愛い服とかは似合わないんだなとは思ってたし、母も私に派手な服を着させようとはしていなかったようです。それで私も控えめに、できるだけ目立たないように小さい頃から行動していました。

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この連載について

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ワイングラスのむこう側

林伸次

東京・渋谷で16年、カウンターの向こうからバーに集う人たちの姿を見つめてきた、ワインバー「bar bossa(バールボッサ)」の店主・林伸次さん。バーを舞台に交差する人間模様。バーだから漏らしてしまう本音。ずっとカウンターに立ち続けて...もっと読む

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コメント

akitect 何気なく読んだ少し前の林さんの記事、すごかった、ゾクゾクした 4年弱前 replyretweetfavorite

Suga_Mitsu 騙された(^_^) 約4年前 replyretweetfavorite

bar_bossa ええと、土曜日の真夜中なので、自慢しても良いですか? 岸本佐知子さんが先日僕がcakesで書いたの話を「お気にいり」に入れてくれました。嬉しいです。うーん、やっぱり嬉しい… 約4年前 replyretweetfavorite

tetsuzoishida |ワイングラスのむこう側|林伸次 @bar_bossa |cakes(ケイクス) この話は秀逸だ。 https://t.co/YszNuK45qc 約4年前 replyretweetfavorite