モチベーション至上主義に異議アリ!

モチベーションという言葉に踊らされがちな現代人。モチベーションが上がらないから……、モチベーションが出ないから……。果たして、仕事をするのにモチベーションはそんなに大事なことだろうか?現代人のビジネススタイルに一石を投じる新感覚のビジネス小説です。


「こちらを志望した理由は?」

「はい、『時代の風を感じとり、世界に目を向け常に変化に挑戦する』、そして、『グローバルで革新的経営により、社会との調和ある成長をめざす』という企業理念に、いたく感銘を受けたからであります」

「ふぅ」

外に出ると自然と息が漏れた。六年ぶりの面接。といえども、こんなに気が張り詰めた面接は初めてだった。

何せ、美沙がDNSへ入社したのは学校推薦。面接は嫌な緊張感もなく、終始笑顔で穏やかな空気が充満していたと記憶している。確実に手ごたえも感じられた。

それが今日ときたら……。自分でも想定外なほどに緊張し、顔が引きつってしまった。志望理由が企業理念そのまんまって。というのも、六年前とは空気がまったく違っていた。正直、美沙は臨機応変に対応できると自負していた。しかし、ピーンと張り詰めたその空気に美沙は気圧され動揺した。視界から色彩が消し飛び真っ白になった。

詰まる所、しっかりと暗記をした企業理念しか口にはできず、臨機応変どころか杓子定規な印象を与えてしまったのではないか、とさえ思わされる結果となった。新卒の就活生の方がよほど気の利いたことを言うであろう。

社会人生活六年。私はこの六年で何を培ってきたのだろうか。いや、何も培っていないのかもしれない。空っぽな自分が悲しくて、悔しくて—情けない。

やり場のない気持ちを抱えながら、とりあえず近くの公園に入りベンチに腰を下ろした。

「面接、確実に落ちただろうな……」 小さく心でつぶやく。


「浅井さん」


えっ? まさか平日の真昼間、こんなところで知り合いに会うはずはないと思っていた美沙は、恐る恐る振り返った。面接帰りというこの状況が、恐れの感情を増幅させていた。

うそっ。

「やっぱり浅井さんでしたか。東京第二ビルからでてくるところをお見かけしたもので」

つけていたの!?

「せっかくの有給休暇、リクルートスーツを着て、セミナーにでも参加されていたのですか?」

坂井は美沙のリクルートスーツをしげしげと見つめながらいつもの抑揚のない声音で言った。

(セミナー、なわけがないじゃない。まったくもって意地が悪い。)

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hirarisa_ みんな早くこの記事を読んで坂井さんの脳内キャスティングをしたほうがいい 6年弱前 replyretweetfavorite