さて、新任監視官だった朱が、狡噛や一係の仲間とともに事件を解決し、成長していったシーズン第1期は、朱と狡噛それぞれが奇妙な着地点に辿り着き、その物語が幕を閉じます。
物語の終盤、兇悪な犯罪者——槙島聖護を追跡する過程で刑事としての職分を逸脱した狡噛は、やがて仲間である朱の許を去り、たったひとりで槙島を追跡します。
こうして、すべてが狡噛と槙島の決着に収束していくなか、主人公であるはずの朱は、物語の中心から疎外され、彼らの宿命の対決を見守るだけの立場になっていきます。
狡噛は、追い詰めた宿敵たる槙島聖護に銃口を向け、自ら裁きを下します。そして〈法〉を逸脱し、決定的な変質を遂げてしまった狡噛は、この後、行方不明となりました。
結果だけ見れば、刑事だった男が犯罪者に魅入られ、完全に道を踏み外しただけです。しかし当の狡噛といえば、転落どころか、ひとりの戦士として完全な成長を遂げ、自由を求めて去ったというふうに、その行く末というのは、悲惨というより、どこか楽観的でさえありました。
一方の朱は、物語の進展とともに成長を要請されながらも、最終的には以前と変わらず「無垢であること」を求められます。
つまり、様々な事件を経て、人間として大きく成長したのに、昔の自分のままでいなければならない、という奇妙な立場に置かれるようになります。
この点で、朱は狡噛と決定的に異なった道筋を辿ることになります。