限りなく純粋(クリア)な青春映画として〔後篇〕

『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』のストーリイを『PSYCHO-PASS ASYLUM』の吉上亮が分析するレビュウ、後篇です。TV1期の事件を経て、狡噛慎也とは別の道を歩むことになった常守朱。劇場版で2人が再会したとき、彼女は何を思ったのでしょうか。異国の地で紡がれる物語を追っていくと、そこにはある純粋なロマンスが見えてきます。

 さて、新任監視官だった朱が、狡噛や一係の仲間とともに事件を解決し、成長していったシーズン第1期は、朱と狡噛それぞれが奇妙な着地点に辿り着き、その物語が幕を閉じます。

 物語の終盤、兇悪な犯罪者—槙島聖護を追跡する過程で刑事としての職分を逸脱した狡噛は、やがて仲間である朱の許を去り、たったひとりで槙島を追跡します。

 こうして、すべてが狡噛と槙島の決着に収束していくなか、主人公であるはずの朱は、物語の中心から疎外され、彼らの宿命の対決を見守るだけの立場になっていきます。

 狡噛は、追い詰めた宿敵たる槙島聖護に銃口を向け、自ら裁きを下します。そして〈法〉を逸脱し、決定的な変質を遂げてしまった狡噛は、この後、行方不明となりました。

 結果だけ見れば、刑事だった男が犯罪者に魅入られ、完全に道を踏み外しただけです。しかし当の狡噛といえば、転落どころか、ひとりの戦士として完全な成長を遂げ、自由を求めて去ったというふうに、その行く末というのは、悲惨というより、どこか楽観的でさえありました。

 一方の朱は、物語の進展とともに成長を要請されながらも、最終的には以前と変わらず「無垢であること」を求められます。

 つまり、様々な事件を経て、人間として大きく成長したのに、昔の自分のままでいなければならない、という奇妙な立場に置かれるようになります。

 この点で、朱は狡噛と決定的に異なった道筋を辿ることになります。

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劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス レビュウ

吉上亮

1月9日に劇場公開され、大ヒットを記録中の『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』。脚本に虚淵玄×深見真のタッグが再集結したことでも話題を呼びましたが、キャッチコピーに「この正義(システム)に最後の引き金を」と添えられたストーリ...もっと読む

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コメント

_Mee2K @tama_wow https://t.co/NhVwHBo5Pk 5年弱前 replyretweetfavorite

kouakaxxaoi @ankg_ 前後編あるのですが、これですっ!https://t.co/iFbSbvsite 5年弱前 replyretweetfavorite

e3e1114 あーめっちゃよかった https://t.co/E8vsPNguA3 5年弱前 replyretweetfavorite

lovegetter 切ないが、そんな感じ 5年弱前 replyretweetfavorite