簡単、おいしい、新しい! あのレシピはどうやって生まれたか?

身近な食材で、簡単でおいしい料理が作れる人気連載「とりあえずビール!」が書籍化されました! 日本ではあまり馴染みのなかった「ポルトガル料理」の意外な美味しさに、驚かされた人も多いはず。そんなレシピの数々を紹介してくれている、バダサオリ改め馬田草織さんをインタビュー。元々編集者/ライターとして活躍していた馬田さんが、どうしてこんなに美味しいレシピをご存知なのか。そしてなぜ「ポルトガル料理」を題材に選んだのかうかがいました。

知ってる人は知っていた、ポルトガル料理は日本人好みの味

— 「とりあえずビール!」の書籍化『ポルトガルのごはんとおつまみ』(大和書房)発売おめでとうございます!

ポルトガルのごはんとおつまみ
ポルトガルのごはんとおつまみ

馬田草織(以下、馬田) ありがとうございます! 約2年間の連載がようやく本になりました。cakesの連載の為に自分で撮っていた写真に、あらたに何枚も撮り直すためにまた料理を作りなおしたりしていて……。

— え、全部の料理ですか?

馬田 いざ書籍にしてみると足りない写真があったり、写真の解像度が紙の印刷には足らなかったりで追加でかなり撮りました。

— それは大変でしたね……。今回は書籍化記念と、連載「とりあえずビール!」の再開に向けてということで、色々とお話をお伺いしたいです。前編では連載のお話を、後編では料理を作りながらお話を聞きかせてください。

馬田 よろしくおねがいします!

— そもそもの話として、なぜ「ポルトガル料理」だったんでしょうか?

馬田 例えば、「たらのコロッケ」にしても「あさりの蒸し料理」にしても、すっごくシンプルですよね。ポルトガル料理って、めちゃくちゃ辛い料理とかがっつりオリーブオイル使ってるとか、そういうヘビーな料理が少ないんですよ。

— 確かに馬田さんのレシピにあまりそういうものは出てこないですね。

馬田 豚を丸焼きにするにしても、味付けは塩と胡椒とラードくらい。同じヨーロッパでもフランスやイタリアやスペインの料理と比べてみると、ポルトガル料理はとくに素材の味を素朴に生かすものが多いと感じたんです。それでどんどん好きになりました。

— なるほど。ちょっと和食に似てますか?

馬田 そうなんです。和食と似ているという点で言えば、ポルトガル料理もだしを使うことが多いんです。たとえば腸詰のだし。「ソーセージ(腸詰め)炊き込みご飯」を紹介しましたけど、向こうでは腸詰めはそのものを焼いたりして食べる以外に、だしのような役割も持っていて、見ていると刻んで加えたりして、調味料みたいな感覚で使う事も多いんです。だから腸詰めの種類を変えるとだしの味も変わって料理の味も変わる。この「ソーセージ炊き込みご飯」も、ソーセージの種類を胡椒やハーブやニンニク入りに変えると、また違う味になって面白いんですよ。

— 繊細な日本料理ではなくて、世界遺産になった「和食」っぽいですよね。

馬田 「干し鱈のかき揚げ天ぷら」のレシピを紹介した時にも書きましたが、そもそも天ぷらからしてポルトガルから渡ってきたものですからね。そういう意味でも共通点が多い。実はポルトガル好きな人と話すと、みんな「ポルトガル料理は日本人が好む料理が多いよね」って言うんです。何しろ作家の檀一雄さんも海沿いの町に住んでたぐらいだし、私がポルトガル料理に出会うずっと前から、知ってる人は知ってたんです。
 あ、それと大事なのが、料理に合わせるお酒、つまりワインがまたおいしいってこと!

— 馬田さんの連載と言えばお酒(笑)。

馬田 ポルトガル料理の魅力は、ポルトガルワインで倍増します。ポルトガルワインって、ってフランスやイタリアに比べるととにかく知名度が低いんですよ。でも、実はおいしいワインの宝庫。だって紀元前からワインを作って、自分達でほとんど消費してきた歴史がある。それってただ国としてワインの良さをアピールするのが不得手なだけで、ポルトガル国内には自分達が楽しんできたお宝ワインが山ほどある。微発泡の爽やかなビーニョヴェルデ(緑のワイン)や、ぶどうの糖度を生かし樽で何年も寝かせたビンテージンのポートワインやマデイラワインなど、ポルトガル独自のものもある。どれも本当においしいのに、知名度が高くないからまだまだ安い。とってもお買い得な掘り出し物ワインばっかりです。

父親に教わった「じゃがいもおやき」のレシピ

— そもそも馬田さんはどうして食を仕事にされるようになったんでしょうか?

馬田 多分きっかけは、小さい頃から家の料理を週一で作っていたことじゃないかな。

— 家の教育で、ですか?

馬田 そうですね。母親が休憩したかっただけかもしれないけど(笑)。小学生の頃は土曜のお昼ごはん、中学校に上がってからは土日の夕食のどちらかは私が作ってました。

— 土曜日のお昼ごはんて、チャーハンみたいな簡単なものを母親が作ってくれたりしますよね。

馬田 そうそう、だから小学生のころは、そんなに難しくないチャーハンかラーメンを作ってました。中華鍋からのスタートです(笑)。あ、それと「じゃがいもおやき」。

— え、それってどんな料理ですか?

馬田 小学生のころは北海道に住んでいたんですけど、父親が食べるのも作るのも好きでよく作ってくれてたんですよ。

— 北海道ではわりと一般的な……?

馬田 どうなんだろ、多分うちの父親が思いつきで作ったオリジナル(笑)。レシピは……

【じゃがいもおやき(一人前)】
1.
すりおろしたじゃがいも(1個)に小麦粉(小さじ1)を混ぜる
2.
玉ねぎ(半個)、ベーコン(100g)のみじん切り、塩、胡椒(適宜)を入れ、さらに混ぜる
3.フライパンに油を敷き、混ぜた具を平らにして両面に軽く焦げ目がつくまで焼いたら完成

これが本当に美味しくて、今でもたまに作ってます。

— おお、これは美味しそうですね。

馬田 料理って面白くて、こういう美味しいものが作れるだけでも嬉しいんですけど、自分の作る料理の味が少しずつ進化していくのを感じられるのも楽しいんですよ。

— 進化、ですか?

馬田 そう。小学生で料理を始めて、最初は塩と醤油こしょうくらいで作っていたのが、ある日オイスターソースっていうのを知るんです。ちょっとなめて「これはすごい!」と。それで、土曜日のお昼に作っていたチャーハンやラーメンに、オイスターソースで炒めた具とかが入るようになって、いきなり味が豪華になったのが自分でも分かるんですね。3歳下の弟にも絶賛されたりして、鼻高々(笑)。

— たしかにそれだけで自分が料理上手になったような気持ちになれますね。

馬田 テーブルタイプの塩コショーを使ってたのが、粗塩になったり、ミルでガリガリ挽く胡椒になったりすると、それだけで自分の腕が上がったような気持ちになる。新しい調味料を知っただけなんだけど、それって料理を楽しく作る上で、すごく大事なことなんだと思います。

— 馬田さんのレシピって、身近な食材で簡単に美味しい料理が作れてしまうところが面白いんだと思うんですが、そういう意味ではぴったりかもしれませんね。

馬田 そう言ってもらえると嬉しいです(笑)。

オリーブ少女から「食」のライターへ

— 馬田さんは『料理王国』や『dancyu』などの雑誌にフリーの編集者やライターとして関わってきていらっしゃいますが、元々は編集者だったんですよね。

馬田 そうですね。

— 料理系の雑誌に携わってこられたんですか?

馬田 いや、編集者になったのは料理が好きだったこととまた関係ないんです。実は私、元「オリーブ少女」で……。

— え……!?

馬田 中学生の頃から『Olive』(マガジンハウス)が好きで、ずっと憧れて読んでたんですよ。だからcakesに載ってた酒井順子さんの「オリーブの罠」も食い入るように読んでました(笑)。

— そうだったんですか(笑)。じゃあフリッパーズ・ギターが好きだったり?

馬田 よく誤解されるんだけど、読者のみんながみんなフリッパーズ・ギターが好きってわけじゃないんですよ(笑)。それに私は洋楽女子だったし。どちらかと言えば『Olive』の世界観が好きで、当時は都内の高校に通っていたので、学校帰りに本に載っているブランドの服を見に行ったりしていて。それと、ちょっとしたきっかけで『Olive』に出る機会があったんです。

— 読者モデルだったんですか!?

馬田 そんな大げさなものではなくて(笑)。英会話の勉強したよーっていう体験レポートとかそういうのです。でもそれでマガジンハウスの編集部に何回か遊びに行っていたんですけど、「こんな遊び場みたいな職場があるのか!」って衝撃を受けたんですね。

— それで編集者になりたいと。

馬田 そこで「雑誌づくり楽しそう!」って思ったのがきっかけですね。大学に入っていろいろな勉強をしたけど、やっぱりその気持ちは変わらなくて、新卒で扶桑社に入りました。

— それで食の本に携わったんですか?

馬田 最初は全然違う仕事をしていたんですけど、当時『料理の鉄人』っていうテレビ番組がすごく人気で、そのオフィシャルブックを書籍編集部にいる先輩が作っていたんですね。

— すごいブームでしたよね。

馬田 その先輩が、食べるのも飲むのも大好きな新人の私のことをかわいがってくれて、本に載ったお店に挨拶行くからお前も来いっていろいろなお店に連れて行ってくれたんですよ。それでレストランで食べることの楽しさに一気に開眼しましたね。

— 馬田さんが、作ることだけじゃなくてレストランにも非常に詳しいのはいつかコンテンツにしたいですね(笑)。

次回は書籍化記念の特別レシピを伺いたいと思います!

『ポルトガルのごはんとおつまみ』出版記念イベントのお知らせ
「ポルトガルの簡単おつまみと珍しいワインで、カンパ~イ!」
【日時】1月25日(日) 16:30~18:30
 16時より、おつまみ作りのミニデモンストレーション開始(無料・予約不要)
【場所】COOK COOP BOOKキッチンスタジオ 東京都千代田区紀尾井町4-5 1階
【料金】3,500円(税込)
【内容】スタンディング形式  ポルトガルおつまみ3品&ポルトガルの微発泡白、赤など珍しいワイン6種類のテイスティング
【定員】40名
【申込先】http://cookcoopstudio.doorkeeper.jp/events/19498

この連載について

ポルトガル料理は「和食」に通ず—馬田草織インタビュー

馬田草織

身近な食材で、簡単でおいしい料理が作れる人気連載「とりあえずビール!」が書籍化されました! 日本ではあまり馴染みのなかった「ポルトガル料理」の意外な美味しさに、驚かされた人も多いはず。そんなレシピの数々を紹介してくれている、バダサオリ...もっと読む

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