山内宏泰
これ、食べられる? 銀座・資生堂ビルで味わう、強烈な「食」の体験——川内理香子展〈絵画〉
赤い外観が人々の目をひく銀座・資生堂ビル。地下の資生堂ギャラリーでは、川内理香子展〈絵画〉が開催中です。ここに並べられている作品に描かれているものは、甘そうなスイーツたち。見ているだけでお腹がすいてきそうなのに、それは食べ物自体ではありません。食べるという「概念」を展示しているかのような今回の展覧会を鑑賞したあとは、資生堂パーラーでお茶なんていかがでしょうか?
東京銀座の資生堂ビルといえば、昔から銀座を象徴する建物のひとつ。ビル内には、数々の小説や絵画に登場してきたレストラン資生堂パーラーなども入っていて、一角からはそこはかとなく文化の香りが立ち上っておりますよ。
地階に降りれば、資生堂ギャラリーです。1919年開廊という長い歴史があって、現存する日本最古の画廊といわれております。ここで現在開かれているのが、川内理香子展〈絵画〉です。新進のアーティストを応援する公募展「シセイドウ アートエッグ」というプログラムで選出された作家による個展となります。
天井の高い白壁のギャラリー内に入ると、人の顔やシルエットを繊細な線で描いたドローイングが幾枚も並んでいます。壁面が大きいのに比して、展示されている点数はささやかで、色合いもごく抑えめ。広い空間に空白の部分がたくさんできていますが、それがほどよく心地よい。頼りなさげに引かれた線の一本ずつを、ゆっくりと目で追っていこうとするときに、白い余白がまわりにたっぷりあることは大いに助けになります。描かれたものに、ぐっと集中できるような感じがあるのですよね。
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この連載について
山内宏泰
世に“アート・コンシェルジュ”を名乗る人物がいることを、ご存じでしょうか。アートのことはよく知らないけれどアートをもっと楽しんでみたい、という人のために、わかりやすい解説でアートの世界へ誘ってくれる、アート鑑賞のプロフェッショナルです...もっと読む
著者プロフィール
ライター。美術、写真、文芸その他について執筆。著書に『写真のフクシュウ 荒木経惟の言葉』(パイインターナショナル)『写真のフクシュウ 森山大道の言葉』(パイインターナショナル)『上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史』(星海社新書)『写真のプロフェッショナル』(パイ インターナショナル)『G12 トーキョートップギャラリー』(東京地図出版)『彼女たち』(ぺりかん社)など。東京・代官山で毎月第一金曜日、写真について語るイベント「写真を読む夜」を開催中。東京・原宿のスペースvacantを中心に、日本写真を捉え直す「provoke project」開催中。
公式サイト:http://yamauchihiroyasu.jp/