第37回】日本の活路は"アジアシフト"しかない。最も愛され、必要とされ、戦いやすい場所で戦え!

各国の名門校で学び、世界トップのシンクタンクに所属した筆者が、知のグローバル競争の最前線事情を語る


〔PHOTO〕gettyimages

地方創生もアジアの力を使え!

勝負がある程度見えていることもあり、こちらシンガポールではあまり話題になっていないが、日本では解散総選挙が迫る。争点はアベノミクスとなるようだが、アジアの金融ハブ・シンガポールでのアベノミクスへの評価は、期待が大きかった分、今は厳しい(ただ投資家たちは、日本経済には悲観的だが、日本株にはいまだかってないほど、短期では楽観的に見ている)。

私は人口が減り高齢化していく日本の活路はアジアの力を取り入れていくことにしかないと思っている。安倍政権の看板政策である「地方創生」にしても、日本の中で「都市」と「地方」が、現代版"列島改造論"のように、人口の奪い合いをしているようでは何の打開策にもならない。衰退する地方こそ、観光から企業誘致まで最も近くて活力のあるアジアの力を利用すべきだろう。

この"アジア"というチャンスに溢れ、課題も抱える場所について、できるだけ正確な最新事情を知ってほしいという思いで新刊『シンガポール発 最新事情から説く アジア・シフトのすすめ』(PHPビジネス新書)を書かせてもらった。

「日本がダメ」で「シンガポールをはじめとするアジアがいい」とか、その逆を語るつもりもない。そんな議論は正しいか正しくないか以前に、あまり意味がないと思うからだ。私が世界中でいろんな人と働いてみて思うのは、世界には完全無欠なパラダイスはないということ。世界を歩き、歴史を学んでみて思うのは、国家や地域の興亡はその時代にその国や地域の在り方、その住人の特性が合っているかどうかだけではないかということだ。

日本もシンガポールもパラダイスではない

私が、この本を書いた理由は「日本にこれから起こるであろうことをできるだけ正確に知ってもらいたい」と思ったからだ。そして「アジアという、今の時代に合った場所で、その勢いを感じながら、自分を成長させることに意義があるでないか」ということを訴えたいのだ。

私が今住んでいるシンガポールには素晴らしい点がたくさんあるが、課題もたくさんある。学生時代にあこがれて住んでみたパリもロンドンもボストンもロサンゼルスもニューヨークもそうだ。もちろん、愛する故郷鳥取も、長く住んだ東京も大阪もいろいろな面がある。住んだことはないが訪ねていった多くの町でも良い面も悪い面もみた。

やがて世界中の各地域の一人当たりの豊かさは同じような値に収斂してくると私は思う。もちろん格差があるので、地域の平均にどれだけ意味があるかは議論の分かれるところだが、傾向としては世界の地域ごとの豊かさの差は減っていくのではないだろうか。この見解については、本文中で紹介した各地域の一人当たりGDPの趨勢チャートをみていただけたら納得してもらえると思う。

日本の豊かさは持続しない

長期的にみれば、人間の能力や生産性に差はないと私は思う。だから日本が今のように一人当たりで世界平均の4倍も5倍も豊かだという時代は続かないだろう。過去2000年の世界経済を振り返れば、1800年以上、日本の一人当たりのGDPは世界平均よりやや低かったのだ。日本は世界的にみてそう豊かな国ではなかった。もし長期的に国家の経済の趨勢に相関する値があるとしたら、それは人口動態だけだと思う。

インドとASEAN(東南アジア諸国連合10ヵ国)で、約20億人の人口で平均年齢が20歳台という人口動態を武器に、アジアは、過去2000年のうち9割以上の時代、世界のGDPの過半数を占めていたように、これから世界のGDPの過半数を創り出していくだろう。この熱気と勢いを感じ、一瞬でもそこに身を置かない手はないと思う。

日本は確実に衰退過程にあると思うが、それも永遠のものではなく、やがて何らかのやり方で盛り返してくるのかもしれない。でもそれにはかなりの時間がかかると思う。時間をかけて作り上げてきた課題が山積なので、簡単には解決できないと思うからだ。その間に世界各地域の生産性や競争力が上がるだろうから、グローバルにつながった世界で、日本が課題を解決しながら世界平均より大きな豊かさを維持することは難しいと思う。

その中で、少なくとも私の子供や孫の時代は、いろんな意味で、日本で教育を受けることが不利に働くと判断して、私は家族とともにシンガポールに移った。変化の時代に、日本以外でも通用する力をつけるには、世界に出て多様性に慣れながら多言語で自らの探求心を突き詰めていくような教育に若いうちから触れることが重要だと思ったからだ。

アジアの時代は確実に来る、というか、もう来ている。だから、「自分も家族」もそこに身を置いて成長できればと思っている。やがてアジアの時代もアフリカの時代にとってかわるのかもしれないが、少なくともこの本を読んでくださる皆さんが人生を謳歌される間は、世界の成長センターは日本の裏庭ともいえるロケーションにあるアジアだと思う。

日本の強運は、国家としては人口減少と高齢化で衰退が予想されるが、その近くに巨大な経済成長センターを抱えている点にある。そして、日本はそこでどんな国より敬愛され尊敬されているのだ。

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田村耕太郎「シンガポール発 ASEAN6億人市場が世界を動かす!」

田村耕太郎

世界最高の高等教育を誇るアメリカをはじめ、シンガポール、インド、中国、ヨーロッパ、そして日本は、グローバルで戦うために、いかに「知」を鍛えているのか。各界で国際的に活躍する人材は、どうやって自分を磨いているのか。各国の名門校で学び、世...もっと読む

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