誰が夏を宣言していたか
今は、夏ではなく冬。そして、TUBEよりサザンが話題な今。何故こういうお題で書き進めるかは冒頭では説明しないし、最後まで説明できないかもしれない。かつて、夏と言えばTUBEで、冬と言えば広瀬香美だったのに、肝心要のTUBEや広瀬香美が率先して夏や冬以外にも働き始めたタイミングがあって、それはもしかしたら、一つの大切な季節感が失われた瞬間だったのかもしれない。
例えば今この1月中旬に少しだけ暖かい日があると気象予報士は「3月上旬並みの陽気でしょう」と口を揃えるけれど、90年代半ば頃、気象予報士が何と言おうと、TUBEが夏と言えばそれが夏の訪れのシグナルだったのである。93年から95年にかけてのシングル「夏を待ちきれなくて」「夏を抱きしめて」「ゆずれない夏」は、いずれも4月か5月に出ている。小学生から中学生にかけての時分、新しいクラスにまだ慣れない頃だってのに、TUBEが、もう夏だよと宣言を重ねてきた。TUBEが夏と言ったから、夏だったのだ。
間接的にほのめかす大物に弱い
昨年末の紅白歌合戦の登場時に、現政権の右傾化を皮肉ったと、サザンオールスターズの歌詞の解釈が物議を醸したが、議論すること自体にいまいち乗り切れなかった。「これは政権に対するアンチの表明に違いない」という勘繰りから、瞬く間にリスペクトが形成されてしまうスピード感。これこそ、今現在、メジャーな音楽シーンに社会批評が欠けている証左とも思えたし、こうして考えられ過ぎることで闇雲に育まれるリスペクトを、本人たちが待望しているようにも見えない。この一件に限らず「さすが○○」と相手を褒め称える時に、○○側ではなくて、その褒め言葉を投じた側の意識の高さばかりが積み上げられていく違和をあちこちで感じる。もっともっと直接的なアピールをしている表現者がいても、それらにはアクセスせずに、間接的にほのめかす大物に「さすが」と声をかけるだけで、自分の意思表示を済ませていくあの感じ。
反知性主義と「サザンってすごい」
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