オン・オフが使い分けられない日本
冷泉彰彦(以下、冷泉) 私が会社勤めをしたときには、いろんな国でいろんな交渉事をやっていたのですが、どこに行っても、結構激しいやり取りになっていました。でも、その後食事に行ったりすると、その話はしないわけなんですよね。で、和気あいあいと食べるんだけど、また交渉の場になると、お互いに絶対に譲らない。
渡辺由佳里(以下、渡辺) 切り替えが見事ですよね。
冷泉 日本人って、その切り替えができない印象があります。つねに関係性がよくないとダメ、みたいな。 でも、本当に問題になることが起きると、本当に手のひらを返したように関係が悪くなるところがある。それってやっぱり異なるものが共存しながらお互いに、手を携えるときのやり方として間違っているんですよね。
渡辺 それは、私の経験をふりかえっても、とてもよくわかります。 異論を述べると、日本の場合には「難しい人だ」と思われやすいんですよね。だから、「こうしたほうがいいんじゃないか」と思っても言えなくなってしまう。 仕事を一緒にしている方に、メールで「私は単刀直入に意見を書くので、怒っていると思われるかもしれないですけれど、そうじゃないんですよ。まったく根に持たない人なので、そちらも言いたいことを率直におっしゃってくださいね」と説明することがよくあります。自分で言うのもなんですが、本当に根に持たない人です(笑) 。
冷泉 いまは、日本だけがものすごく豊かで殿様商売できるという状況ではないので、このままでは世界と渡り合って行くことはできないんですよね。いろんな形で厳しい条件の中で勝ち取って行かなければならない、そのためにはやっぱり「関係性はよくしておいて、条件交渉は厳しくする」っていう大人の対応ができなければダメ。
渡辺 意見の違いはあってあたりまえですよね。それを前提に、互いの意見を出しあい、交渉し、妥協点を見つけるというやり方が必要ですね。
人間は意見が対立する生き物
冷泉 それってやっぱり、本当に個人の生き方でもそうですよね。 本当に、ちょっと意見が違うと絶交しちゃったり……。
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