誰だって、コミュニケーション上手になれる
—— 新刊『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』刊行決定おめでとうございます。本業のアナウンサーだけでなく、イベントのMCやアニメの制作指揮まで縦横無尽に活躍されているなか、本当にお疲れさまです。
吉田尚記(以下、吉田) ありがとうございます。昨日ようやく校了しました。
—— 今回の本は「コミュニケーション」の本だそうですが、世の中にコミュニケーションについて書いた本というのはたくさんありますよね。吉田さんはなぜこのテーマで本を出そうと思われたのでしょうか?
吉田 僕、コミュニケーションというゲームの盤面解説ができるんですよ。これは今までに誰も書いていない発想じゃないかと思っています。
—— コミュニケーションってゲームなんですか?
吉田 そうなんです。「盤面解説」という言葉を使ったとおり、僕は将棋に近いイメージで捉えています。指し手どうしのやりとりによってどんどん展開していき、最後に決着がつく。将棋がうまい人と同じで、コミュニケーション能力の高い人たちは、向き合った瞬間にお互いがそうだとわかる。それでパッパッとコミュニケーションをとるわけですが、一瞬で試合が終了してしまうから、ふつうの人には個々のやりとりにどんな意味があったのかわからない。
—— その一つひとつを、吉田さんは解説できるということですね。
吉田 「こうすればコミュニケーションがうまくいく」という定跡があるんです。そして、それは一つではなくたくさんあって、さまざま組み合わせが可能です。定跡の組み合わせが頭のなかに入っていればほとんど困らない。コミュニケーションがうまい、いわゆる「コミュ力が高い」人は、無意識にそれらを身につけて使いこなしているんです。
—— 今回の本を読めば、誰でもそれが使え、コミュニケーション上手になれると。
吉田 コミュニケーションの基本的な捉え方を説明した上で、「これを知っていれば、コミュニケーションをうまくとれる確率が上がる!」というテクニックを紹介しています。いわばコミュニケーションの底本です。
コミュニケーションの「目的」とは?
—— 吉田さんがアナウンサーとして学んだ「コミュニケーションの技術」を解説してくださるというわけですね! でも、それって、吉田さんにとっては商売上の秘密を明かしてしまうことになるのでは?
吉田 いや、そんなことは問題じゃないですよ。少しでもコミュニケーションを楽しくできる人が増えたら、僕もうれしいですから。というのも世の中の大半の人って、コミュニケーションの目的を誤解しているので。
—— コミュニケーションの目的……。いろいろあると思いますが、たとえば「自分の印象をよくする」とか「相手にこちらの要求を受け入れてもらう」というようなことですか? 少なくともこれまでのコミュニケーションの本はそうした想定で書かれていますよね。
吉田 全然違うんです。それはコミュニケーションの目的を達成したときの、副次的な効果にすぎません。他に何か思いつきませんか?