僕:数学が好きな高校男子。
ユーリ:僕のいとこの中学女子。僕のことを《お兄ちゃん》と呼ぶ。
$2015$ を $2$ 進法で書く
ユーリ「あけおめー」
僕「おめー」
ユーリ「ことよろー」
僕「よろー」
ユーリ「ねー、お兄ちゃん知ってた? $2015$ って、 $2$ 進法で書くと左右対称なんだって」
僕「へえ、そうなんだ」
ユーリ「えーっとね、 $2015$ を $2$ 進法で書くと $11111011111$ なんだよー」
$$ \begin{array}{cc} \text{ $10$ 進法} & \text{ $2$ 進法} \\ \hline 2015 & 11111011111 \\ \end{array} $$
僕「ユーリ、そんなのよく気付いたなあ」
ユーリ「ネットで話題になってた」
僕「そうなんだ」
ユーリ「それからね、平成 $27$ 年の $27$ も $2$ 進法で書くと左右対称になるんだよ。 $11011$ だって!」
$$ \begin{array}{cc} \text{ $10$ 進法} & \text{ $2$ 進法} \\ \hline 27 & 11011 \\ \end{array} $$
僕「おもしろいな……ユーリ、それメモしてたの?」
ユーリ「そーだよ。お兄ちゃんに教えてあげよーと思って」
僕「そりゃどうも」
ユーリ「こないだお兄ちゃんから $2$ 進法教えてもらってから、ちょっと興味あるの」
僕「 $2$ 進法の話なんてしたっけ?」
ユーリ「したじゃん。ほらほら《数当てマジック》のとき(『数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう』参照)」
僕「なるほど。 $2$ 進法は好きだよ。 $2$ 進法がらみでは、いろんな数学者が出てくるけど、ライプニッツの話が特に好きだな」
ユーリ「誰それ」
僕「がく。ライプニッツは有名な数学者だよ。ニュートンと並んで微分を考えた人でもある」
ユーリ「ふーん」
僕「ライプニッツはね、 $10$ 進法で数列を書くよりも $2$ 進法で書いた方が、 パターンを見つけやすくなるっていってる」
ユーリ「パターン?」
僕「うん。数列が持っているパターンが見つけやすくなるということは、数列が持っている性質を見つけやすくなるってことだね」
ユーリ「そーなんだ」
僕「さっきユーリがいってた《左右対称》っていうのもパターンの一種といえるかも」
ユーリ「どーして、 $2$ 進法だとパターンが見つけやすいの?」
僕「どうして見つけやすいか……そうだなあ。 $2$ 進法で使われている数字は $0$ と $1$ しかないからかもね。 $10$ 進法だと $0$ から $9$ まで使うから、 数の並びがあったときにどれとどれが同じかわかりにくい。 でも $2$ 進法だと $0$ と $1$ だけだから、《 $0$ が連続している》や 《いつも右端に $1$ が来る》や《左右対称》みたいな性質に気付きやすいのかな」
ユーリ「ふーん……」
$2$ 進法
ユーリ「ところで、 $2$ 進法って $0$ と $1$ しか使わないの?」
僕「えっ! そうだよ。だって、 $2$ 進法だと、 $2$ になったら繰り上がりが起きるから」
ユーリ「あ、そっか」
僕「ほんとにわかってるのかなあ」
ユーリ「わーってるって」
僕「 $0,1,2,3,4,5,\ldots$ を、 $2$ 進法で数えられる?」
ユーリ「えーと、たぶんね。最初 $0$ でしょ。次が $1$ で、そん次が $10$ (イチゼロ)」
僕「そら、そこで繰り上がりが起きてるよね。 $1$ に $1$ 足したら、 $2$ 進法だと $10$ になる。繰り上がりして $2$ 桁の数になった」
ユーリ「そだね。ユーリ、表を作れるよ」
ユーリ「ね? ちゃんとわかってるでしょ?」
僕「そうだね。ライプニッツの言う通り、この表だけでもパターンがいくつか見えるよね」
ユーリ「縦読みするんでしょ? 一番右端の数は $0,1,0,1,0,1,\ldots$ になってる」
僕「うん。一番右端の数は、 $2$ 進法の《 $1$ の位(くらい)》だね。この数が $0$ ならば偶数だし、この数が $1$ ならば奇数だ」
ユーリ「それから、縦読みすると、右から二番目の数は $0,0$ と $1,1$ がかわりばんこ」
僕「右から二番目の数は、 $2$ 進法の《 $2$ の位》になるね。 $10$ 進法だと《 $1$ の位》《 $10$ の位》《 $100$ の位》《 $1000$ の位》……になるけど、 $2$ 進法だと《 $1$ の位》《 $2$ の位》《 $4$ の位》《 $8$ の位》……になるんだよ」
ユーリ「ふんふん」
僕「じゃ、ここでクイズを出すよ」
ユーリ「なになに?」
僕「 $10$ 進法で書いたときに $19$ になる数を、 $2$ 進法で書いたらどうなる?」
ユーリ「わかんない。覚えてないもん」
僕「がく。お兄ちゃんだって覚えていないよ。どうなるかを考えてほしいんだけど」
ユーリ「えー……あ、そっか。さっき $15$ までの表を作ったから、そこから始めればいっか。 $15$ が $1111$ で、 $16$ が $10000$ で、 $17$ が $10001$ で、 $18$ が $10010$ だから、 $19$ は $10011$ だ!」
僕「はい正解。 $10$ 進法で $19$ と表す数は、 $2$ 進法では $10011$ と表せるね」
ユーリ「かんたんだよ」
僕「じゃ、 $39$ を $2$ 進法で書いたらどうなる?」
ユーリ「おんなじじゃん! $20$ のときは $10100$ ……みたいに書いてけばいーよね! めんどいからやりたくないけど」
僕「うん、そういうと思ったよ。ユーリがさっきやったみたいに、 $1$ ずつ増やしていく方法は悪くない。でも、大きな数を $2$ 進法で表そうとしたときには、 すごくめんどうなことになってしまうよね」
ユーリ「そだね……でも、他に方法あるの?」
僕「それが問題になる」
$10$ 進法で書くと $39$ になる数を、 $2$ 進法で書くとどうなるか。
ユーリ「どーすんのかにゃあ……」
僕「たとえば、こんなやりかたがある。 $10$ 進法で書かれた数を読むときに $1,10,100,1000,10000,\ldots$ と唱えるよね」
ユーリ「うん、やるやる。いち、じゅう、ひゃく、せん、まん」
僕「 $2$ 進法でもそれと同じようにやってみる。ただし、 $1,2,4,8,16,32,\ldots$ と唱える」
ユーリ「 $2$ 進法だから $2$ 倍に?」
僕「そうだね。いま調べたいのは $39$ の書き方だから、 $39$ に近くなるまではその方法を使う。 $\underbrace{1,2,4,8,16,32}_{\text{$ 6 $個}}$ だから、 $2$ 進法で $100000$ という $6$ 桁の数は $32$ になる。 あとはこれに $10$ 進法の $7$ 、つまり $2$ 進法の $111$ を足せばいい。 $2$ 進法で $100000 + 111$ を計算すれば $100111$ だね。これが $39$ に相当する」
ユーリ「 $7$ ってどっから来たの?」
僕「すでにわかった $32$ から、いま表したい数 $39$ まで進むのにあと $7$ ってこと。つまり $39 - 32 = 7$ だね」
ユーリ「あ、そっか、わかった」
$10$ 進法で書くと $39$ になる数を、 $2$ 進法で書くと $100111$ になる。
僕「いまのは、自分が $2$ 進法で表したい数の近くまでは、倍々で進んでいくという方法だね。これだと $1$ ずつ増やすよりずっと楽だ」
ユーリ「でもさー、もっと大きな数だとやっぱりめんどくなるよ」
僕「うん、そろそろ一般的に《 $10$ 進数を $2$ 進数で表す方法》を考えた方がよさそうだ。そもそも、 $10$ 進法で $39$ になる数が、 $2$ 進法で $100111$ と書けるというのは、 どういうことかを考えてみよう。これは、こういうことなんだ」
ユーリ「?」
僕「つまり、 $39$ という数を、 $1,2,4,8,16,32,\ldots$ という $2$ の冪乗(べきじょう)の数の《和》の形で 表しているということ」
ユーリ「あー、そーだった。そんな話してたねー」
僕「 $39$ という数は、 $32, 4, 2, 1$ という $2$ の冪乗の和に書ける。これはそれぞれ $2^5, 2^2, 2^1, 2^0$ という形。 途中の $2^4$ と $2^3$ は飛ばしている。これを入れちゃうと $39$ は作れないから。 どの数を使って、どの数を飛ばすかは、 $1$ を掛けるか $0$ を掛けるかで表す。 $2$ 進法では $2$ の冪乗を使うことになっているから、 あとは、その $1$ と $0$ の並びさえわかればいいってことになる。 このときの $1$ と $0$ の並びが《 $2$ 進法で書かれた数》すなわち《 $2$ 進数》になる」
下線部の $1$ と $0$ の並びは $100111$ になる。
ユーリ「ふんふん」
僕「この《 $2$ の冪乗のうち、どれを足してどれを足さないか》を表したものが $2$ 進数だとわかっていれば、 $10$ 進数を $2$ 進数に変換する方法も見つけることができるんだよ」
ユーリ「へー!」
僕「ひとことでいえば《繰り返して $2$ で割って余りを調べていく》というやり方なんだ」
ユーリ「どゆこと?」
この連載について
数学ガールの秘密ノート
数学青春物語「数学ガール」の中高生たちが数学トークをする楽しい読み物です。中学生や高校生の数学を題材に、 数学のおもしろさと学ぶよろこびを味わいましょう。本シリーズはすでに14巻以上も書籍化されている大人気連載です。 (毎週金曜日更新)