たった一度でも
愛の腕に抱かれたことがあるならば
おまえの人生は
おちぶれ くちはて うす汚れる ことはない
たった一度でも
愛の腕に抱かれたことがあるならば
おまえの人生が
さげすみ わらわれ 安物になる ことはない
見知らぬ土地で たったひとり 消えるとも
あのくちびるに ふれて感じた 一秒が
ありありと よみがえり
いまでもそこに ふれることができるから
最後までずっと わたしのものなのだから
さよならよりも やわらかな 腕に抱かれて
青いのは空
「一度でも愛の腕」
テオドール・シュトルム(1817~1888)
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。