現在、我々の世界は、自分が意識しないところであらゆる出来事がデータ化されています。自分たちが購入した物や店舗情報、時間帯、交通手段、Web閲覧、趣味嗜好、通院回数まで多岐にわたります。
これらのデータはクラウドとCPU(中央演算処理装置)の発達に伴い莫大な処理能力を持つようになり、「ビッグデータ」や「データビジュアライゼーション」というキーワードが世界各国で注目を集めるようになりました。
データビジュアライゼーションは、簡単に言うとそのデータを一目で分かるようにした方法、つまりビジュアルを使ったデータ整理術と言えるでしょう。英語には、「A Picture worth a thousand words」ということわざがあります。正しく翻訳すると、日本語の「百聞は一見に如かず」になりますが、本来の意味は、「百語は一見に如かず」のほうが適当なのです。
データビジュアライゼーションは正にそのことわざの通りです。データ、つまり情報をいかにビジュアル化・可視化できるかという課題を扱い、数値の配列であるデータを「誰でも理解できる」ようにする分野です。データビジュアライゼーションと相性がよいデータや悪いデータは、特にありません。どのようなデータでもビジュアライズ(可視化)することができます。
SNS上のコミュニティーによって構成される「ソーシャルデータ」や、小売業界で重要な「誰が・どこで・いつ買った」のセールスデータ、統計局が発表する「オープンデータ」など、どのデータでもビジュアライゼーションの対象となります。本ムックで掲載しているビジュアライゼーションも、実に多種多様なデータを表現しています。
目的に合った手法を知ろう
しかし、すべてのデータが可視化できるとはいえ、様々な手法があり、それぞれのデータに正しい表現方法を使うことがデータビジュアライゼーションのポイントです。円グラフ、折れ線グラフまたは棒グラフなどは、皆さんが日頃見慣れているグラフで、実際に使っている方も多いでしょう。これらのグラフは、一般的には「Excel」などで作成していると思いますが、実際にデータビジュアライゼーションの基礎の1つでもあります。
それに加え、位置情報を表現するのに使う「地図」(マッピング)、情報の相関関係を表す散布図やバブルチャートなどは、データビジュアライゼーションを作るにあたって有力な武器となります。さらに、レーダーチャートやベン図のような多くの手法が存在しており、それらを組み合わせることで、無限にビジュアライゼーション方法が生まれます。
重視すべき点は、見た目やフォーマットでなく、データの見やすさを最優先にすることです。インフォグラフィック(注1)と違って、データを忠実に伝えるのがデータビジュアライゼーションの第一目標となります。つまり、いかに格好いいものを作っても、データが伝わらなければ意味がありません。無駄な飾りや複雑なデザインは考えないほうがいいでしょう。
注1:インフォグラフィックは、データビジュアライゼーションの一環となり、アイコンやイラストを使って、ある程度主観を入れてデータを表現する方法。なお、情報全体でなく、世界観・切口を最優先にしてデータを絞ることがあります
ビジュアライゼーションの世界は実は歴史が長く、日々進化しています。円グラフや線グラフすら存在していなかった時代でも活用されていました。さて、ここでまずは、データビジュアライゼーションが歩んできた歴史をたどっていきましょう。
データビジュアライゼーションの歴史
データビジュアライゼーションの起源については、諸説あり、先史時代のラスコーやアルタミラ洞窟の壁画に遡るという人もいます。しかし、多くの「データ」が可視化されるようになったのは、中世に入ってからだと思われます。
下の作品がイシドールスの『語源』(Isidore deSeville Etymologiae)というものです。
イシドールスの語源
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。