私もキラキラしたいから
先日、突然面談を切り上げられた美沙は、暫し自身の過去を回想していた。さまざまな思いが去来する。楽しかったこと、嬉しかったこと、切なかったこと……。そしてその中でも、どうしようもなく湧き上がる自身の強い思いがあることに美沙は気付き、確信をした。
私、相当の覚悟を持っていまを生きている。そう、私には揺るぎない“覚悟”がある。
毎日同じ時間の電車に乗り出勤をする。何となく過ごしてきた今までの日々。そんな日々には終止符を打つと決めたのだ。自分の人生、日常に流されることなく、自分自身で切り開いていくと決めたのだから。
この覚悟は、面談を受けたときだって、変わりはない。人生最大とも言えるこの覚悟、舐められてたまるものですか!
「どうしましたか?」
「はい、前回の面談では、しっかり気持ちを伝えられなかった気がしたので、もう一度お話を聞いていただいてもよろしいでしょうか?」
「どうぞ」
相変わらず、血の通わない蝋人形のような容貌で坂井は美沙の目の前に存在した。そんな坂井に向け自身の思いを口にするのは、相当に気が滅入ったが、美沙は持てる勇気を総動員して口を開いた。
「私の友人で、退職をしてマクロビカフェをしている子がいるんです」
「マクロビカフェ、ですか」
「はい。無農薬・自然農法の穀物や野菜を中心にしたカフェです。健康を意識したカフェですね」
「はい。それで?」
「友人はもともと健康志向で、カフェにも憧れを抱いていて、それを実現させたわけです」
「なるほど」
「先日、友人と電話で話したのですが、それはもう、キラキラとしていて。電話口からもそのオーラが伝わってきて。好きなことを仕事にしているとこんなにも輝けるのか、そう思ったんです。
それは、小説家や映画監督のように脚光を浴びることはありませんが、それでもキラキラ輝くことはできるんだ、って。
先日はちゃんと伝えられなかったのですが、私が目指しているのは、ここなんです!」