あいさつで相手を食べる異星人に出会ったら?
—— 本棚を見せていただいて、SFの本が多い印象を受けました。
海外SFその1
海外SFその2
三谷宏治(以下、三谷) 小・中・高校生のころは、ほぼSFしか読んでなかったですからね。あ、科学系の本も読んでたかな。それらを合わせたら全体の8割くらいになったと思います。
—— それは、かなり偏っていらっしゃる(笑)。なぜ、そういう本を読むのが好きだったのでしょう。
三谷 理由はよくわかりません。純粋に好きだったんだと思います。読むと世界が広がる感じが楽しかった。読んで「宇宙の年齢」を知るとするじゃないですか。当時は160億年と書かれていて、今は絞りこまれて約137億年と言われています。そういうことを知ると、やっぱり誰かにしゃべりたくなるんです。それで、母親に「ねえねえ、知ってる? 宇宙の年齢って160億歳なんだよ」とか言うわけです。
—— いきなり(笑)。
三谷 母親はまったくそういうことに興味がない人でした。でも、ちゃんと毎回「そうなんだ、すごいね。また教えてね」って言ってくれたんです。だから、また翌日、「ねえねえ、知ってる? 恐竜ってさ……」と話しかける。その無限ループみたいになってましたね(笑)。
—— それはすごくいいですね。
三谷 でもね、SFを読み続けて、中学生になったときに思ったんです。「ああ、こんなの、大人になったら何の役にも立たないんだろうな」って。
—— そんな(笑)。
三谷 だって、荒唐無稽な話ばかりなんですよ。宇宙を支配するとか、ワープ(光の速度を超えて移動)するとか、時間の壁を超えるとか。そんな簡単に超えられるわけないじゃないですか(笑)。でも、逆に、大人になってから、自分の発想の源はSFにあると再確認しました。
—— SFが、ですか!?
三谷 名作といわれるSFは、最も根源的な問いに対して、本質的な解を提示するという構成になっています。例えば、『未知との遭遇』は、ファーストコンタクトものと言われる、いわゆる「異星人」との出会いを描いているわけですよね。ファーストコンタクトもののSFってたくさんあるんです。それは何を根源的なテーマにしているのかというと、「コミュニケーションとは何か」ということなんですよ。
—— なるほど。
三谷 地球上でのコミュニケーションギャップなんて、たかが知れています。特に人間同士だったら。星新一さんのショートショートではありそうですけど、いきなりあいさつで相手を食べる、とかないですよね(笑)。でも、異星人はそうはいかない。あいさつで相手を食べる異星人と会った時、さあ、あなたはどうしますか。そのあいさつを断れば、宇宙戦争が起きるんです。
—— ええと……どうしましょう(笑)。
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