番外編】2014年のタモリ

今年最後の「タモリの地図」は特別編をお届けします! 2014年はタモリにとって特別な年になりました。30年以上続いた『笑っていいとも!』が終了し、毎日テレビで見ていたタモリ見られなくなった喪失感「タモロス」という言葉が流行語大賞にもノミネートされました。しかし、数えきれないほどのタモリ関連書籍の発売や、新番組のスタート、この大晦日には紅白の審査員として出演が決まるなど、ますます活躍の場を広げています。

終戦直後に生まれ古希を迎えた稀代の司会者の半生と、 敗戦から70年が経過した日本。
双方を重ね合わせることで、 あらためて戦後ニッポンの歩みを 検証・考察した、新感覚現代史!
まったくあたらしいタモリ本! タモリとは「日本の戦後」そのものだった!

タモリと戦後ニッポン(講談社現代新書)

歴史的に正しいタモリの菊池寛賞受賞

2014年度の菊池寛賞の受賞者の一人にタモリが選ばれた。作家の菊池寛を記念した同賞は、文化の各分野で創造的な業績をあげた個人や団体に贈られる。菊池寛という人は、小説だけでなく劇作も手がけ、また雑誌『文藝春秋』を創刊したり、映画会社の大映の初代社長を務めたりするなど、その活動は多岐におよんだ。それだけに菊池寛賞の対象も、文学・映画・演劇・新聞・放送・出版など幅広い。テレビの世界からも、1959年の第7回でクイズ番組『私の秘密』を企画したNHK芸能局が受賞したのをはじめ、翌60年にはTBSの東芝日曜劇場、61年にはNHKのホームドラマ『バス通り裏』が選ばれるなど、本放送開始まもなくから受賞例は少なくない。「電気紙芝居」などと揶揄されることも多かった草創期のテレビだが、菊池寛賞はこの頃からよいものにはちゃんと評価を与えていたのだ。

タモリが菊池寛賞を受賞したと知ったときは、意外な感じもしたが、前年にはタモリともつきあいの長いサザンオールスターズが受賞していることだし、先述のような同賞の歴史を踏まえるとごく自然の流れにも思える。

今回の受賞の“歴史的正当性”を裏づける要素としてはまた、こんなこともあげられる。それは、昭和の喜劇人・古川ロッパと菊池寛との関係だ。この連載でも以前触れたとおり、タモリはロッパに親近感を示していたことがある。ロッパは喜劇役者になる前、『映画時代』という雑誌を独力で出していた時期があり、それをバックアップしていたのが菊池寛だった。当時からモノマネなど芸に秀でたロッパを菊池は買い、のちには阪急・東宝グループの創業者である小林一三らとともに喜劇役者になることを後押ししている。ようするにロッパにとっての菊池は、タモリにとっての山下洋輔や赤塚不二夫のような存在だったのだ。文化人に愛されたことといい、モノマネで世に出たことといい、ロッパとタモリの類似点は少なくない。そんなロッパの恩人の名を冠した賞であることを考えれば、菊池寛賞ほどタモリにふさわしい賞はないともいえるのではないか。

受賞式でのスピーチでタモリは、かつて『笑っていいとも!』で、その年一番無口だったゲストに「くちきかん賞」というのをあげようとしたが、結局実現できなかったと明かしたという。それがまさか自分が本物をもらうとは、というのがそのオチだった。じつは菊池寛その人も無口で、まさに「くちきかん」と陰で呼ばれていたという。ちなみに「くちきかん」は菊池寛の名前の音を並べ替えたアナグラムだが、そもそもタモリという芸名もアナグラムであることを考えると、よりこのスピーチが味わい深く感じられる。

「タモロス」どころか「タモ充」に終わった2014年
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この連載がついに書籍化!「森田一義」はいかにして「タモリ」になったのか。関係者への追加取材や大幅加筆でその足跡をさらに浮き彫りにします!

この連載について

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タモリの地図—森田一義と歩く戦後史

近藤正高

2014年3月31日、『笑っていいとも!』が32年間の歴史に幕を下ろしました。約32年間、毎日テレビに出続け今や国民的タレントになったタモリ。そんな「昼の顔」だけでなく、アングラ芸で身を起こし、深夜番組『タモリ倶楽部』で披露する「夜の...もっと読む

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コメント

luke_cat えーっと、ブラタモリじゃなくてヨルタモリじゃないでしょうか……。ちょっと驚くミスだな。 6年弱前 replyretweetfavorite

snobbism01 タモ充とは、見事な言い当て方。 6年弱前 replyretweetfavorite

donkou 『いいとも!』の終わった今年のタモリを振り返ってみました。菊池寛賞をタモリがもらった意味についてなど。 6年弱前 replyretweetfavorite