これは僕が長野刑務所で服役していた時に書き始めたものだ。
生まれて最初の記憶から現在までを時系列で辿っていく、いわゆる自叙伝ということになる。 これまで沢山の本を書いてきた。会社の作り方、マネー術、人生論、小説などジャンルも様様だが、それらの中で自分の過去のこと、特に子どもの頃や学生時代の話をまとまった形で文字にすることはなかった。
なにも隠してきたわけではない。
読者にとって有益な情報を伝える際に、背景や説得材料として過去のエピソードが必要であれば、その都度持ち出すことも厭わなかった。しかし過去を書くことそのものを目的とした本は1冊もない。
なぜなら僕自身が過去を振り返るという行為になんの意味も見出せなかったからだ。
過ぎ去った時間に思いを馳せるなんて、暇な人間のすることだと考えていた。
23歳で起業して以来、僕に暇な時間は皆無だった。
どんな人にも時間だけは平等に与えられている。時間あたりの作業効率と判断のスピードを極限まで上げていかなければ、僕のやりたいことは到底実現できなかった。そしてそこでの基本は、今現在目の前にある案件にありったけの集中力を動員すること。今書いているメール、今話している相手、今見ているニュース、今考えているビジネスプラン。とにかく今、この瞬間に集中するのだ。
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