橋本愛「台本に書いてあると、考えちゃう。でも、考えない」

2009年に映画デビューして以来、『告白』や『桐島、部活やめるってよ。』、『寄生獣』などの話題作にコンスタントに出演している橋本愛さん。そんな橋本さんの最新主演作『ワンダフルワールドエンド』が1月17日から公開されます(蒼波純さんとのW主演)。主題歌を歌うのは、生々しい歌詞で人間の内面をさらけ出すシンガーソングライターの大森靖子さん。もともと大ファンだったという橋本さんが、撮影中に号泣しそうになったほど強く感じた、大森靖子さんの「力」とは?

橋本愛がいま輝いてる3つの理由

若手演技派として高い評価!
「日本アカデミー賞」の優秀新人俳優賞や、「ヨコハマ映画祭」の最優秀新人賞など、主だった新人賞のタイトルをいくつも受賞。これからの映画やドラマ界を支える若手として、期待されています。

圧倒的な存在感で演じる、ひろい役柄
役者としてのキャリア5年目にして、すでに20本以上の映画に出演している橋本さん。役柄も、デビュー作『Give and Go』で演じた難聴の少女から、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』でのご当地アイドル役まで幅広く、ミステリアスな存在感を発揮しながらの自然な演技が、多くの観客の心をつかんでいます。

カルチャーに対する感度の高さ
映画や音楽、漫画などに触れることが大好きだという橋本さん。マイナーな作品や、最先端のアーティストにも目をつける感度の高さは、カルチャーへの理解の深さを感じさせます。

怒らないし、ケンカもしたことない

— 映画『ワンダフルワールドエンド』拝見しました。橋本さんは詩織という、17歳の売れない撮影会モデルの女の子を演じています。激昂して彼氏をベランダに蹴りだしたりと、かなり激しいシーンもありましたね。


詩織が彼氏をベランダに蹴りだすシーンは、大森靖子のPVにも使用されている(該当シーンは3:09ごろ)

橋本愛(以下、橋本) あぁ、はい。なぜか私、キレる役が多いんですよね(笑)。どうしてそういう役ばっかり来るのか、わからないんですけど。

— 橋本さん自身はあまり怒らない?

橋本 怒らないです。ケンカもしたことないですし。というか、昔から平和主義だったっていうか。丸く収める方向に持っていっちゃうところがあります。

— 詩織は、仕事も彼氏との関係もうまくいかず、やるせない毎日を送っていますね。橋本さんは、詩織をどんな女の子だと思いましたか?

橋本 自分を客観視することがすごくヘタな女の子なんだと思います。他人から見たらバカみたいに思えることも、必死にまっすぐにやってて。でも、それがぜんぜん報われてなくて……。“負けてる子なんだなぁ”って思いました。

— その必死さに涙が出ました。特に、詩織がツイキャス※を通じて、泣きながらファンにある報告をするシーンが、心に刺さって。※ツイキャス:スマートフォンなどで自分の動画をライブ配信できるサービス。劇中の詩織は、ツイキャスを使ってファンとコミュニケーションを取っている。

橋本 あぁ、ありがとうございます。あのシーンって、「泣けなかったら仕方ないか」くらいのフラットな気持ちで臨んだんです。ツイキャスって、ほんとは画面に視聴者のコメントが流れてくるものじゃないですか? でも、撮影の時は何もコメントが流れていないiPhoneに向かって、さもコメントに反応しているように演技しなきゃいけなかったので。

— それはやりづらそうですね。

橋本 はい。でも、演技しているうちに、気持ちが“涙の出る穴”みたいなところにうまく落ちてくれた感じで。自然と泣けましたね。うまく嘘がつけてよかったなって思います(笑)。

仮面を被ってカッコよく歌う姿にあこがれて

— 詩織の気持ちと自分の気持ちが、一番リンクしたシーンってどこですか?

橋本 詩織が、大森靖子さんのライブを観に行くっていうシーンがあるんですね。あそこは、実際に大森さんがライブをやっているところに、カメラと一緒に入らせてもらって撮ったんですけど……。カメラが回ってなかったら号泣してたんじゃないかなっていうぐらい、大森さんの力を強く感じて。

— 大森さんの力、とは?

橋本 聴いている人を、すっごい肯定してくれるというか。救ってくれるような力。私、大森さんのライブにはプライベートで何回も行ってるんですけど、あの撮影の時は普段とはぜんぜん違う感覚になりましたね。最初から“詩織モード”でライブ会場に入っていったので、詩織ちゃんの気持ちを共有できたのかなって思います。

— おもしろい話ですね。役を着ることで、ライブの受け取り方も違ってくるという。

橋本 そうなんです。不思議な体験でしたね。自分でもおもしろかったです。

— 詩織は、大森靖子さんの力強い音楽を支えにしているようなところがありますよね? 映画全体も、大森さんの曲の世界観とリンクしています。

橋本 彼女は一応、モデルをやってはいるんだけど、自分の存在価値が認められさえすれば、本当はモデルじゃなくてもなんでもいいと思うんですね。誰かの特別になりたいとか、何者かになりたいっていう変身願望の方が、詩織の中では大きいと思うんです。
 だから、大森さんがライブで“変身してる感じ”というか、仮面を被ってカッコよく歌っている姿に、憧れているんだと思います。

— なるほど。確かに、大森さんの『ロックンロールパラダイス』という曲にも、ステージの上でだけスターを演じている大森さん自身のようにも受け取れる歌詞があります。

橋本 そうですね。私自身も、大森さんのそういうところが好きで。ライブを見ていると、大森さんが動いているのを見るだけで泣いちゃったりすることとか、よくあるんですよ(笑)。

— 橋本さんご自身が、そんなに大森さんを好きなんですね。

橋本 でも、最初に好きになったきっかけは、大森さんの歌詞とかスタイルというよりも、「この音楽聴いてると、心地いいなぁ」っていう感覚的なところなんですけど。大森さんの歌い方って、歌で自分の気持ちを発散しているというか、自分を開放している感じが、とんでもなくて。見ていてすごく気持ちいいんですよね。
 だから、理屈じゃなくて、単に“相性”みたいなのが自分とすごく合ってたっていうことだと思うんです。

— 映画の中では、橋本さんが『ミッドナイト清純異性交遊』をアカペラで絶唱するシーンがありますよね。夜の公園で。

橋本 あぁ。はい。

— あそこ、すごくよかったです。大森靖子があの場に立っていたらこう歌うんじゃないか、と思えるほど、見事な“完コピ”だと思いました。

橋本 ありがとうございます。ふふふ。そう言っていただけてよかったです。超不安だったから。

— やっぱり、自分の歌っているところって、人に見せたくないですよね?

橋本 見せたくない(笑)。だから、あの撮影の時は、撮影スタッフをどれだけ無視できるかっていうことが重要でしたね。まわりの人をどれだけ忘れられるか。その上で、あの暗くて寒い公園の空気を感じながら歌おうって思ってました。

— ほとんど即興的に演じているように見えますが、台本にはどういう指示があったんですか?

橋本 「踊る」、とか(笑)。

— ざっくりしてますね(笑)。

橋本 そう書いてあったら、やっぱり振り付けとか考えちゃうじゃないですか。でも、考えない(笑)。段取りとかなるべく無視して、そのままの役の気分でやれればなぁって思いながら歌いました。

次回「最初は『この子バカなのかな』って思った」は、1/13(火)更新予定。

橋本愛(はしもと・あい)

1996年1月12日生まれ、熊本県出身。2008年、現在の所属事務所が主催した「HUAHUAオーディション」でグランプリを受賞し、芸能界へ。2009年、ファッション誌『セブンティーン』の主催するミス・セブンティーンコンテストでグランプリを受賞し、モデルデビュー。2009年、映画『Give and Go』で映画初出演・初主演。以後、『告白』『桐島、部活やめるってよ。』『寄生獣』などの話題作や、朝の連続テレビ小説『あまちゃん』などで注目を浴びる。

構成:西中賢治



『ワンダフル・ワールドエンド』
2015年1月17日(土)-新宿武蔵野館ほか、全国順次公開!
橋本愛 蒼波純 稲葉友
利重剛 町田マリー/大森靖子
監督・脚本:松居大悟 音楽・劇中・主題歌:大森靖子

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いま輝いているひと。

cakes編集部

あの人は、どうして輝いているのか。いま目が離せないあの人に、たっぷりお話を伺います。

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コメント

seremdip | ワンダフル・ワールドエンド、見たい見たい見たい 約4年前 replyretweetfavorite

campintheair 僕の最新妄想を聞いてください。 )→ご自身のインタビュー記事を確認がてら、cakesのコンテンツを眺める→「あっ、映画の批評がある」→僕の映画連載を読む→伊藤さんステキ……→伊藤さんのファンです♡ 約4年前 replyretweetfavorite

mokuzuchan たのしみすぎる"@cakes_PR: 若手演技派女優・橋本愛さんが、歌手・大森靖子さん(@oomoriseiko)について語ります。 " 約4年前 replyretweetfavorite