めんどくさいジャンキー」がつくる作品の魅力とは?

広告からミュージックビデオ、プロダクトにいたるまで、幅広い「モノづくり」をしているクリエイターの川村真司さん。いまはクリエイティブラボPARTYニューヨークオフィスを立ち上げて、活動しています。日本に一時帰国した川村さんに、「これからのクリエイティブ」について聞きました。まずは、「めんどくさくないと、やった気がしない」と語る「めんどくさいジャンキー」の川村さんがつくってきた作品をずらっと紹介します。

新しくて、おもしろいものをつくる

— 川村真司さんがどんな人なのか、それはつくっている作品に一番表れているはず。ということで、最初は川村さんがつくってきたものをうかがっていければと思います。最初の作品というと、どのあたりになるんでしょうかね?

川村真司(以下、川村) 世に出たもので言えば、SFC(慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス)で佐藤雅彦先生の研究室に所属していたときですね。テレビ番組の『ピタゴラスイッチ』をつくったりしていました。あれは、子どもに新しい概念を学ばせるための教育番組があるとしたらどんなものか、研究室の実習で考えるなかから生まれたんです。学生のアイデアでミニコーナーをつくって、まとめて15分くらいの番組にしたらどうか、と。僕が手がけたパートは、「ピタゴラ装置」と「アルゴリズム体操」です。

— へえ! 「ピタゴラスイッチ」を代表する2つのコーナーじゃないですか! それは川村さんが考えたんですか。

川村 「企画のもと」みたいな部分はということですけどね。アルゴリズム体操の振り付けは、佐藤先生と一緒に考えました。二人で体操してるプロトタイプの動画がどこかにあるはず(笑)。ピタゴラ装置は、身の回りのものを使った、連鎖的な運動で進行していくからくり装置です。これによって、家で子どもが日用品を見る目がちょっと変わるといいな、と思って考えました。家からフォークとか本とか缶とかいろんなもの持ってって、2週間くらいNHKに泊まりこんでつくってましたね。

— そして大学卒業後は、博報堂のCMプランナーの道に進まれた。

川村 1年目からけっこう裁量を持たせてもらって、JINROのCMなどを企画していました。男女が「JINRO!」って言いながら踊ってるだけのやつです(ホームパーティー篇)。企画を考えた当初は、振り付けを描いた紙だけを上司に見せたんですよね。そうしたら、「よくわからない」と言われて。くやしいので、友達とその踊りを踊ってるところを撮影したんですよ。次の日、それを見せたら上司が、「よくわからないけど、おもしろいからそのままプレゼンしよう」と言ってくれて、クライアントも「よくわからないけど、おもしろい」と通してくれて(笑)。

— そのままCMになってしまった(笑)。たしかに、ただ踊ってるだけの異色のCMでした。

川村 情報詰め込み型のCMは多いけど、酔っ払って楽しいところをそのままダラっと見せるCMってなかったんですよね。逆に、商品名を連呼するだけのほうが目立つかなと思ったんです。

— そして、その後は広告をつくりながらも、自主制作でものをつくっていかれた。

川村 広告にちょっと疲れちゃったんですよね(笑)。博報堂をやめて海外のエージェンシーに行ったころつくったのが“RAINBOW IN YOUR HAND”という、パラパラしたら虹が見えるフリップブックです。


Rainbow In Your Hand

川村 これは最初、会社のプリンターで出力して、自分で製本して、50部つくったんです。YouTubeに動画をアップしたら、1週間で数万ビューいって、けっこう「欲しい」という声も届いてきました。いまはユトレヒトという書店・出版社さんで量産してもらっていて、おかげで世界中のオンラインショップやミュージアム・ショップに置いてもらったりしています。

— ミュージックビデオ(MV)をつくられたりもしていますね。


SOUR 「日々の音色 (Hibi no neiro)」

川村 はい。日本のバンドだとSOURやandropやミスチルといったバンドのビデオをつくってます。SOURは僕が初めてミュージックビデオをつくったバンドで、この「日々の音色」が3作目でした。

— これ以降、この手法を使った動画がたくさん出てきましたね。

川村 結婚式のビデオとかで真似してがんばってくれるのは、すごくうれしいですね。アイスランドの小学生がやってくれたときは、「どうやるのか教えて」という連絡が来たから教えてあげたりして、すてきなコミュニケーションがあったんです。

— 「日々の音色」の次につくられたのが、同じくSOURの「映し鏡」ですね。


SOUR「映し鏡'(Mirror) - non connected version -」

川村 これは、いまPARTYニューヨークオフィスで一緒に働いてる清水幹太と、初めて一緒に仕事した案件です。

— これはすごく清水さんのプログラミングが活かされてますよね。

川村 そうですね。ゴリゴリと(笑)。この作品でクラウドファンディングを初めて活用してみたんです。まだ日本にはクラウドファンディングのプラットフォームがなかったので、アメリカのKickstarterを使ってやりました。ちょうどKickstarterがローンチした年だったかな。予算がほぼゼロだったので、集めたお金はサーバー代に消えました(笑)。

くじけそうになったとき、サポーターの存在が支えになる

— 次の「Life is Music」でもクラウドファンディングを活用されていました。


SOUR「Life is Music」

川村 このときは、日本のGREENFUNDINGとKickstarterの2つを使いました。やっぱり日本のバンドだから、日本のプラットフォームで、日本のファンにもっと届くかたちでやりたいという思いがあったので。フェナキトスコープという、円盤を回して動かすアニメーションの技法を使っているのですが、1枚だけだと同じ動きしかしないので、違う絵を描いたCDを180枚以上用意しています。それらをモーターに取り付けて、調整しながら回転させて編集しました。


メイキング SOUR「Life is Music」

— そして、今回はMVではなく、安野モヨコさんのマンガ『オチビサン』の映像をつくられている。


Ochibi - Spring - No Music

川村 はい、原作のある映像を制作するのは初めてです。オチビサンが日本の四季や自然をテーマにした作品なので、季節の風物詩を使ったコマ撮りアニメーションを撮っています。春は、花見のお弁当ですね。夏は団扇に描かれたオチビサン、秋は落ち葉でできたオチビサン、冬は湯のみに絵付けしたオチビサンを動かします。

— オチビサンやお弁当の具を動かすの、すごく大変そうですね……。

川村 いやあ、大変です(笑)。コマ撮りって、ひと作品つくるたびにもうやりたくないって思うんですけど、やっぱりまたやりたくなっちゃうんです。シンプルなんだけど、手業をどれだけ細かくできるかによって、すごくクオリティが変わるんですよね。やり始めてしまうと必然的に大変なことになるんですが、その分いいものができるのがわかっているので……。

— こちらもクラウドファンディングをやっているんですよね。

川村 はい。クラウドファンディングって、お金を得る新しい手段というだけでなく、ファンとつながってつくれるところがすごくいいと思っていて。
 僕の場合、とってもめんどくさい映像が多いから、一人でつくっているとくじけそうになったりするんですよね。そういうときに、「こんなにサポートしてくれてる人がいるんだから、がんばろう」とふんばる力になる。そのメリットはすごく大きいです。サポーターが増えるということは、作品ができあがったとき、喜んでくれる人が増えるということですからね。

— ひと季節ずつつくってるんですか?

川村 そうです。春が音楽以外は完成したので、次は秋をつくっています。その次に夏と冬に取りかかろうかなと。夏と冬は、それぞれ団扇と湯のみの実物に絵を描いていくので、春と秋より時間がかかるんです。そしてその実物の団扇や湯のみはそれぞれ、クラウドファンディングのリターンになっています。

— それはファンにとってはうれしいですね。ものすごい数になるんじゃないですか?

川村 団扇だけで、700枚くらい使う予定です。

— それに一つひとつ絵を……なんだかどんどんめんどくさいことに挑戦されているような気がします。

川村 もう自分のこと、「めんどくさいジャンキー」なのかな、って思いますよ(笑)。めんどくさくないと、やった気がしない。このアニメーションも、お話をいただいてから1年経ったのに、まだ4分の1しかできていないってどういうことなんでしょうね(笑)。でも、クオリティを落とすなんてことは考えられないので、ここからさらにこだわってつくりますよ。

— 夏以降の映像も楽しみです。


(次回へ続く)

構成・写真 崎谷実穂


川村真司さんが取り組んでいるクラウドファンディング「オチビサンの春夏秋冬オムニバス PARTY 川村真司 × 漫画家 安野モヨコ」はこちら!(締め切りは、1/15まで)

この連載について

これからのクリエイティブ—PARTY NY川村真司インタビュー

川村真司

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コメント

wkwkstr  めんどくさいジャンキー!あるあるw 2年以上前 replyretweetfavorite

st_disegno "당초 회사의 프린터로 출력하고 자가 제본해 50부를 만들었습니다." https://t.co/uF39hO7vFo 4年弱前 replyretweetfavorite

miyaseven #後で読む 4年弱前 replyretweetfavorite

sadycork オチビサンの映像を作ってくれている川村君@masakawa のインタビュー!  とてつもない熱量で作られる一瞬の映像です。http://t.co/Xn8Sm0kU6r 4年弱前 replyretweetfavorite