専業主婦の国・ニッポン」の実態に迫る—はじめに

若い女性のなかに“隠れ専業主婦願望”が広がっていると言います。ダンナの稼ぎだけでは食べていけなくなっていると知りながら、彼女たちはなぜ、キャリアを捨てようとするのか? 女性の社会進出が叫ばれる中、専業主婦のリアルから見えてくる“フツウの幸せ”の大きな代償を解き明かします。

日本は「働く女性」の国になった?

 安倍政権が「女性活躍推進」を重視するようになってから、新聞や雑誌にワーキングマザーの記事が載らない日はないのでは……と思います。「時短でも管理職に」「両立のコツ」など笑顔のロールモデルが誌面を飾る。「両立支援」「イクメン」「ワークライフバランス」「働き方の改革」などの文字が踊ります。

 日本はすっかり「働く女性」の国になったような錯覚を覚えます。

 でも実態は6割の女性が第一子出生後に無職になっている。無職になって何をしているかといえば「専業主婦」として子育てしています。

 辞めた理由で最多の4割が「家事・育児に専念するために自発的に辞めた」です。

 最近ではワーキングマザーばかりに注目が集まっているけれど、専業主婦はどうしているのでしょうか?

 なぜ専業主婦に今あえて注目するのか? それはまだ日本が専業主婦の国だから。女子大生を含め「いつかは専業主婦」になれると信じている女性たち。一度子育てをやめてパートをする「元専業主婦」もいれれば、日本のかなりの女性がこれに入る。

 私が出会う20代の働く女子たちは「今はバリバリやっているけれど、子どもが生まれたら会社を辞めよう」と思っている人が多い。私が教えている女子大生たちにライフプランを描かせると「いつか養ってくれる人と結婚する」と確信しているのがよくわかる。就活が辛くなると「もう婚活でいい……」とつぶやく彼女たちを「婚活のほうが大変だから」と叱咤激励して引き戻しています。30代になったら仕事を辞めて……と夢見る20代働き女子も、必死に啓蒙しています。「今の女子大生って専業主婦志向なんでしょう?」と、マスコミの方に聞かれることがよくあります。「それは今や専業主婦こそがなれないもので、働くことから逃れられないと考えるからです。誰だって希少なものに憧れますよね?」と答えますが、相手が40代の働く女性だと悲しそうな表情になります。この専業主婦をめぐる複雑な感情はなんなのか、といつも考えさせられます。

専業主婦も「いつか働きたい」!

 それでは、一度専業主婦になった人は次に何をしたいのか?

「今、専業主婦をしている人でも9割はいつか働きたいと思っているんですよ」

 リアル主婦の雑誌、「サンキュ!」の編集長が教えてくれました。

 子育てで仕事を辞め、子育てをしながら、今度は働くことを夢見る。

 いったい日本女性は働きたいのか? 働きたくないのか?

「どちらかはっきりしろ」という感じですよね?

 でも専業主婦の再就職は厳しくて、4人にひとりしか正社員には戻れない。

「どこかに秘密結社があって結託して私を落としているのでは?」

 と思うほど、不採用の通知をもらうのが現実です。(『主婦が、仕事を、探すということ。』ウインズ望月恭子と就活中の主婦たち/東洋経済新報社)

 共働き世帯が片働き世帯より多いと言われていますが、女性の6.5割が非正規です。日本の女性の多くが共働きとはいえ、パート主婦。配偶者控除の範囲内の年収100万前後しか働いていません。当然、夫に養ってもらっています。

 日本では「一度専業主婦になること」は「一生夫に養ってもらわないと生活が成りたたない」リスクを抱えることなんです。当然離婚や夫のリストラ、病気などのリスクがあります。65歳以上の単身女性の2人にひとりが貧困です。結婚し、子育てし、夫がいなくなった途端(離婚か死別)、あっという間に貧窮になる。日本は専業主婦という資源を使い捨てにしています。

 コミックエッセイ『離婚してもいいですか?』(野原広子/KADOKAWA)では、経済力がないから、モラハラ夫との結婚生活を続け、いつか「離婚を夢見る」女性の日常を描いていますが、それを読んで「こんな女性は日本にはたくさんいる」と思いました。

「働き方」が見えないから「専業主婦」になりたがる

 そんなに働きたいなら「辞めなきゃいいのに」と思う方も多いでしょう。

 私も「輝かなくてもいいから働き続けること」を推奨していますが、辞めてしまう理由もよくわかります。

「子育て」プレッシャーが重すぎるから、「子育てはしっかりと」という世間の目は母親だけに向かっています。両立可能な仕事が少なすぎるんです。

「『産め』『しっかり育てろ』『働け』って、私に死ねっていうんですか?」

 という声も多いのですよ。

 こんな厳しい要求に応えられる、ちょうどいい「働き方」がないのです。

 そしてやりがいのある正規の仕事についている人なんて、少数派。高卒で非正規の仕事の女性たちが、また大卒で正規でも毎日終電で帰る疲れ切った女性たちが、「子育てしながら家にいたい」と思うのも当たり前です(非正規で妊娠と同時に「マタハラ」で、あっさり雇い止めになる人も多い)。

 そして「働く女性」の先進国アメリカでは「ハウスワイフ2・0」現象などという、専業主婦の復活もあるようです。

 この本では徹底的に、女子大生や「隠れ専業主婦願望」を抱える未婚女子、そして専業主婦の実態、専業主婦のリスクなど「専業主婦の正体」に迫ってみました。

「専業主婦」という言葉に伴う、何かモヤモヤしたもの。女性は養ってもらえるものという社会のモデル。それが日本女性の地位が極端に低い(ジェンダーギャップ指数104位)原因であり、少子化の要因であり、「女性が輝けない」原因なのではないか……そのモヤモヤに向かい合うことで、多くの女性たちがスッキリとして次のステップに進めるものと願っています。


専業主婦になりたい女たち (ポプラ新書)
専業主婦になりたい女たち (ポプラ新書)

この連載について

専業主婦になりたい女たち

白河桃子

若い女性のなかに“隠れ専業主婦願望”が広がっていると言います。ダンナの稼ぎだけでは食べていけなくなっていると知りながら、彼女たちはなぜ、キャリアを捨てようとするのか? 女性の社会進出が叫ばれる中、専業主婦のリアルから見えてくる“フツウ...もっと読む

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コメント

oborozuki61 https://t.co/9j1eYx4qGa 2年以上前 replyretweetfavorite

_daisylily ”私も「輝かなくてもいいから働き続けること」を推奨していますが、辞めてしまう理由もよくわかります。「子育て」プレッシャーが重すぎるから「子育てはしっかりと」という世間の目は母親だけに向かっています。両立可能な仕事が少なすぎるんです。” http://t.co/5yWRGxDsxn 4年弱前 replyretweetfavorite

_daisylily "それでは、一度 乳幼児期に傍にいたい、というのが多数かな。 4年弱前 replyretweetfavorite

_daisylily ”共働き世帯が片働き世帯より多いと言われていますが、女性の6.5割が非正規です。日本の女性の多くが共働きとはいえ、パート主婦。配偶者控除の範囲内の年収100万前後しか働いていません。当然、夫に養ってもらっています。” http://t.co/bQAyh71E8g 4年弱前 replyretweetfavorite