【第31回】
「最善の答え」のエビデンスを探せ
—人類の英知のヒエラルキー

あえて断言しよう。あらゆる学問のなかで統計学が最強の学問であると。 どんな権威やロジックも吹き飛ばして正解を導き出す統計学の影響は、現代社会で強まる一方である。「ビッグデータ」などの言葉が流行ることもそうした状況の現れだが、はたしてどれだけの人がその本当の面白さを知っているだろうか。この連載では、cakesという新しいプラットフォームに相応しい、最新かつ最も刺激的な統計学の世界を紹介したい。(毎週火・金更新)

 本連載でここまでに書いた内容を十分身につけていれば、少なくとも統計学に則って記述されたほとんどの情報について、その意味についても、その限界についても理解できるはずである。

 近代物理学を生み出したアイザック・ニュートンは「私が遠くを見ることができているのだとすれば、それは巨人の肩に立っていたからです」という言葉を残している。巨人とはすなわち「先人たちの知恵」という意味だ。先人たちの積み重ねた知恵をきちんと学び、その上に立脚することができれば自分だけの頭を絞るよりも遥かに先を見通せるはずである。ニュートンという大天才ですらそうしているのに、なぜ我々がそうしないのか、という話だ。

 世界中には学者や専門家が生涯をかけて明らかにしたさまざまな知恵がある。それはこれまでにも何度か紹介した事実であるが、現代においてその知恵の多くは統計解析の結果、もっと具体的に言えば回帰係数やp値といったものによって表現されている。統計リテラシーはこうした知恵を迅速かつ正確に活用できるように、ひいてはあなたを巨人の肩に導いてくれるはずだ。

 本連載も残すところあと2回となったが、最後は統計リテラシーを実際にあなたの人生に活かすためのエビデンスの探し方について紹介したい。

エビデンスのヒエラルキー

 エビデンスとは科学的な根拠のことだ。現代の医療はEBM(Evidence Based Medicine)と呼ばれ、必ずエビデンスに基づいた治療を選択しなければいけないということになっているし、前にも述べたように欧米では教育や政策決定においてもエビデンスが重視されるべきであるという法律・ガイドラインが増えてもいる

 科学的根拠というと、科学的に研究された結果は何でもエビデンス扱いするのかということになってしまうが、エビデンスはすべて横並びのものではない。ほぼ間違いない根拠として信頼すべきものから、参考程度に聞いておくべき仮説レベルのものまでのヒエラルキーが存在しているのだ。

 その一番最下層に属するエビデンスは「専門家の意見」と「基礎実験の結果」である。
 専門家の意見がエビデンスとして最低限の信頼性しかないというのは今更書くまでもないと思う。一方基礎実験とは、試験管の中で行なった生化学的な実験や、ネズミやサルなどを使った動物実験などのことである。

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この連載について

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統計学が最強の学問である

西内啓

あえて断言しよう。あらゆる学問のなかで統計学が最強の学問であると。 どんな権威やロジックも吹き飛ばして正解を導き出す統計学の影響は、現代社会で強まる一方である。「ビッグデータ」などの言葉が流行ることもそうした状況の現れだが、はたして...もっと読む

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