未来予測を嗤え!

第1回】未来予測を嗤え!

12月10日に発売された「未来を予測することは可能か?」「ビッグデータの本当の意味」「人工知能の可能性」などといった現代科学の問いに対し、プログラマーにして人気の書評家・小飼弾さんと、気鋭の数学者・神永正博さんが語り尽くす対談書『未来予測を嗤え!』。本連載では書籍の内容の一部を紹介していきます。第1回は、本書の対談を構成した、山路達也さんに、本書の企画や狙いについて話を聞きました。


—『2050年の世界』や『2052』といった数十年後の世界情勢を予測する書籍が話題になっていますが、『未来予測を嗤え!』というのはこれに対するカウンターなのでしょうか?

山路 いや、最初の段階では、「未来予測はどこまでできるようになってきたのか」といったテーマで考えていました。ビッグデータ解析が話題になっていましたしね。だけど、「未来予測はできると思いますか?」という質問に対する、小飼さんの第一声が「最悪なのは、未来は決定しているのだけれど、人間が予測することはできないというケースですね」でしたから(笑)。神永さんも「私自身は未来予測に関してはどちらかというと否定的です」と。
 幅広い分野に通じた二人がそういうのであれば、「未来予測はできない」ことを切り口にして、人間や社会の本質に迫っていく本にしていこうとテーマを切り替えたのです。読者の1人1人が、自分の未来を模索するためのベースになる、知的な講義にしようと思いました。

—実際の対談はどんな雰囲気だったのでしょう?

山路 こちらの投げたボールに対する、小飼さんの回答というのはだいたい一筋縄ではいかないんです。こちらの意表をついた回答が返ってくるので、それを自分なりに解釈して再度質問して……と。禅寺で修行している小坊主になった気分でした。
 神永さんの専門は数論を応用した暗号技術ですが、国際関係や経済などにも目配りされていて、小飼さんの話を丁寧にフォローしていただきました。それでも、話があさっての方向に飛んでいってしまうことはしばしばでしたが(笑)。
 小飼さんはプログラマーなので、ITネタになるとつい熱くなってしまう。64ビットCPUのアーキテクチャの変遷についていきなり熱く語り始めて、同席している出版社の編集者が目を白黒させているのが、おかしかったです。プログラマーなら大喜びする話題もたくさんありましたが、今回の本では泣く泣くカットしています。
 神永さんはそういう脱線はあまりしないのですが、数学の話になるとやはり熱くなります。「数学が苦手になる人が多いのはどうしてだと思いますか?」なんて私の質問に、神永さんが「例えば、開集合は縁が開いているというイメージで説明されることが多いのですが、抽象化を進めると、空集合と全体集合は開集合、有限個のインターセプションは開集合、加算無限個のユニオンは開集合という3つのルールに集約されます。一般的な感覚と、数学者の扱う抽象概念は断絶してしまうんですね」と答え、小飼さんが喜んでその話題に食いつき、私と編集者は2人して目を白黒させるという(笑)。
 あ、本にはそんな数学の話は出てきませんから、安心してください。

—今回の本では、経済や社会保障の問題も取り上げられているわけですよね。

山路 はい。でも、この対談がユニークな点の1つとして、「経済」だけを切り出すのではなく、科学的な視点から経済とエネルギーの関係を捉えようとしていることが挙げられます。
 例えば、小飼さんは社会保障政策として「ベーシック・インカム」(政府がすべての国民に対して最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金を無条件で定期的に支給する仕組み)を支持しています(今回の本では、さらにラディカルな主張もしています)。なぜ彼がこうした政策を支持するのかというと、エネルギーの面から考えてそれが合理的だから。
 私たちは、科学は科学、経済は経済……というように、さまざまな問題を分野ごとに分けて考えがちですが、本当はあらゆる分野は相互に関連しています。科学的な知見と、社会学的な知見。分野にとらわれずに物事を見ることで、人間や社会がまったく違うように見えてくる。そうした知的な興奮を、2人の対談で味わっていただけるとうれしいですね。

※1月3日(土)掲載分の次回より書籍のダイジェストを掲載いたします。

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未来予測を
嗤え!

神永正博 小飼弾・著
[編集]角川書店[発行]KADOKAWA
発売日:2014/12/10
定価:864円(税8%込)

角川新書

この連載について

未来予測を嗤え!

小飼弾 /神永正博

統計学やビッグデータの普及によりいろいろな分野で未来を予測することが可能になった。しかし予測では知ることがきない、人類にとって大事なことがある。人気の書評家と気鋭の数学者による白熱講義!

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コメント

netalius69 #neta #学び |小飼弾/神永正博|cakes(ケイクス): 12月10日に発売された「未来を予測することは可能か?」「ビッグデータの本当の意味」「人工知能の可能性」などといっ.. http://t.co/aN9Oo0RstL 5年弱前 replyretweetfavorite

azaelia 断然?……断絶?… / 一般的な感覚と、数学者の扱う抽象概念は断然してしまうんですね https://t.co/RbzY9wodVJ 5年弱前 replyretweetfavorite

hazkkoi 私たちは、さまざまな問題を分野ごとに分けて考えがちですが、本当はあらゆる分野は相互に関連しています。 5年弱前 replyretweetfavorite

kadokawaone21 cakesにて新連載を開始しました!→ 5年弱前 replyretweetfavorite