おまえのひたいに おれのくちづけ
いま別れのひとときに
ひとこと言わせてくれ
おまえは間違っていなかった
ふたりの日々は 夢だった
けれど
真夜中の闇に 白昼のまぼろしに
希望が消え去ったからといって
ふたりの日々が
意味のない夢だったとは 思わない
ふたりが生きる この世界さえも
すべて 夢のまた夢に すぎないのだから
打ち寄せる波 砕ける響き
そのなかにおれは立ち尽くし
金色の砂を握っている
ふたりの日々を 嘆くほど
音もなく
指の間をさらさらと こぼれ落ち
ひとつぶさえも 残らない
神様 どうして この両手
これほど 何もつかめない
ひとり見つめる 冬の海さえ
すべて 夢のまた夢に すぎないのだろうか
「おれもおまえも夢のまた夢」
エドガー・アラン・ポー(1809~1849)
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