「わかりやすく伝えます」を争った選挙速報番組
今回の選挙速報番組を各局ひとまとめに解析すると、「どの局も池上彰的なことをやりたがったが、池上彰的なことをやるのは池上彰が当たり前に上手かった」ということになるだろう。政界再編の可能性が少しも見込めない選挙だったが、伝える側には、与党の席にテレビ東京が居座るという再編が起きていた。箸休めとして羽生結弦のフィギュア映像を使うことができたテレビ朝日と、ジャニーズ勢を擁立できた日本テレビは他局との差別化が容易だったが、候補者の1行プロフィールなど、「わかりやすく伝えます」への過剰さはどの局にも通底していた。
池上彰の分かりやすさに挑んだ心意気は、各局のラテ欄を見れば伝わってくる。「どこよりも分かりやすい(日テレ)」「政治に関心なくても楽しめます(テレビ朝日)」「〝ありのままで〟語る(TBS)」「一目で分かりやすく(NHK)」と、宣伝文に池上彰エッセンスを散りばめた。唯一その手のコメントを載せなかったフジテレビにチャンネルを合わせると、様々な論客が円になって論じ合う場に片山さつきと櫻井よしこが隣り合って座っており、授業参観にやって来たお母さん達の香水がキツくて嘔吐をもよおした小3の秋のことを思い出してしまい、あまりチャンネルを合わせることができなかった。
古舘伊知郎の「どこまでが芝居なのか」問題
コメンテーターになにを求めたのか各局のプロデューサーに聞いてまわる人脈など皆無なので、ここでもラテ欄に頼ってみよう。与党の「聞きづらくても聞く!(テレビ東京)」に対抗するように「〝村尾信尚〟が生攻防(日テレ)」「ひるおび恵が緊急参戦(TBS)」「安藤×ミヤネがタッグ/予測不能トークバトル(フジ)」と、それぞれのコメンテーターを特徴付けしたなか、テレ朝のラテ欄は古舘伊知郎について言及していない。
古舘伊知郎の芝居がかった話術は今に始まったことではないが、それぞれのニュースを「どこまでが芝居なのか」を引き算してから咀嚼しなければいけないのが面倒だ。骨太な特集を組むことが多々あるので『報道ステーション』を見る機会は多いのだが、古舘伊知郎の深刻そうな顔からどれくらい引き算して考えるのが適当なのか、その数式を誰も教えてくれない。今回、開票後の安倍首相へのインタビューはもっとも早い局で22時から、時間は各局6分と決まっていたようで、その最初の札を得た古舘は一番手という事実をやたらと嬉しそうに安倍首相に報告していた。「またスタジオに来てください」と投げると「古舘さんは手強いですから」と返され、これまた嬉しそう。
人の話は聞かないが言いたいことだけを言う古舘
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