8月の初め、「彗星ヒッチハイカー」に研究費をつけてくれたNIAC (NASA Innovative Advanced Concept)プログラムのミーティングが、NASA本部のあるワシントンDCであった。それを無事に終えた翌朝、目覚めてベッドの中で携帯をチェックすると、母からの急を知らせるメールが届いていた。祖母の容態が悪く、会いたい人にいまのうちに会っておけと医師から告げられた、との事だった。すぐに僕は、2週間後に東京に向かう飛行機のチケットを予約した。
(左:小野雅裕さんの妹 真ん中:小野雅裕さん 右:小野さんのおばあさん)
飛行機がロサンゼルスの空港を飛び立つと、すぐに太平洋に出た。快晴のカリフォルニアの空の色を映した、どこまでも青い海だった。その海を見下ろしながら、僕が考えていたのは優しい祖母のこと、そして6年前に亡くなった祖父のことだった。この海こそが、若い頃の祖父が夢を抱き、そして若い頃の祖母が愛する人の帰りを待った海だったのだ…。
僕が宇宙に憧れたように、祖父は若い頃、海に憧れた。学校の帰りにしょっちゅう制服のまま神戸港へ行き、そこに出入りする船を眺めていたそうだ。大洋を渡る大きな船を見て、見たこともない遠い異国の風景を色々と思い浮かべていたのだろうか。そして将来は白いセイラー服を着た船乗りになりたいと夢見たのだろうか。
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