そろそろ死ぬから、どういうふうに老いぼれて、ボけていくかを書こうかなと。

筒井康隆さんは御年80歳。ところがその年齢をまったく感じさせません。『創作の極意と掟』ではこれまでの経験から創作の手の内を惜しげもなくさらし、短篇集『繁栄の昭和』では一作ごとに旺盛な実験精神を発揮した最新作品を収録。活発な執筆活動を続けています。人気作家として時代の最前線で活躍しながら、なおかつ新たな試みを続けてきた筒井さんにとって「小説家」とはどんな仕事なのかをうかがいます。第三回は新刊『繁栄の昭和』に込められたオマージュと、創作の根底にあるシュルレアリスムと夢について。

夢の通りに書いた「繁栄の昭和」の舞台

── タイムスリップして、ネットやスマホしかない未来に作家になっていたら、どうされますか?

筒井 よくわからんな。いまの僕が思っているのはむしろ未来より過去。「筒井康隆が、昭和初期に戻って、こういう作品を発表したらどう思われるのか」。新しいと思われるのか、メチャクチャだと思われるのか、若書きだと評価されるのか。そこに興味がありますね。谷崎潤一郎が、森鴎外が、夏目漱石が読んだらどう思うかとかね(笑)。
 未来なら、現に生きているわけだから、もしネットやスマホでしか小説を発表できないとなったら、それは発表すると思いますよ。仕方ないもんね、それは。

── 鴎外、漱石が日本の近代文学の最初のほう、と考えると、案外歴史は浅いですよね。

筒井 その前もちょっとあるけどね。いろいろな流れ、流派があるけれど、鴎外と漱石は別格ですね。あの人たちは、それぞれ別個にやっていて、それぞれ別格。あとはね、川端康成、横光利一などの新感覚派という前衛的な流れがあったりね。

── いまはそういう古典と切り離されてしまっているような気がして惜しいですね。

筒井 意外なものもあるんですよ。たとえば谷崎(潤一郎)にもドタバタ的な作品があります。『武州公秘話』。あれ、面白いよ。腹を抱えるところもあるしね。どんな、めちゃくちゃな話であっても、やっぱり夢中で書いて、自分のものにしてしまうんです。谷崎のいちばんの傑作は「卍」だと思うけど、あれはすごいよ!

── 筒井さんの最新刊の『繁栄の昭和』はそういった筒井さんの過去への思い入れと、現代小説の最前線の手法、どちらから読んでも楽しめる作品集だと思いました。舞台は昭和でも、手法はモダニズムですから。

筒井 どうしてもそうなるんですよね。基本的にはシュルレアリスム。しかも、シュルレアリスムはちょっとレトロな感じのほうがそれらしくなるんです(笑)。
 僕は東京オリンピックのちょっと後で東京に来ましたから、その頃のことを知っているんですよね。その移り変わりも見ていますから。

── そうやって蓄積されてきたものが、あるとき、変容して小説になる。そのメカニズムはどうなっているんでしょうか。

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創作の〝掟〟を打ち破る力」—筒井康隆インタビュー

筒井康隆

筒井康隆さんは御年80歳。ところがその年齢をまったく感じさせません。『創作の極意と掟』ではこれまでの経験から創作の手の内を惜しげもなくさらし、短篇集『繁栄の昭和』には一作ごとに旺盛な実験精神を発揮した最新作品を収録。活発な執筆活動を続...もっと読む

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コメント

kami_kazushige #筒井康隆の世界の出典をみつけよう(初級) たぶん、ここの画像ですね。 https://t.co/8QHxFeLLXc https://t.co/4gfKdC5XVe 1年以上前 replyretweetfavorite

yomoyomo "筒井 若い人の前で「乱歩さんが云々」なんて言ったら、びっくりするわけですよ。彼らにとっては歴史上の人物なんだね(笑)。こっちは会ってるんだけどね。" https://t.co/rn2kbSl971 約5年前 replyretweetfavorite

KeKKero  「乱歩先生に会って~」とか「星新一がさあ」とか原発出来る前のチェルノブイリとかもうね、歴史ですよ歴史。この御方は歴史に生きている。 約5年前 replyretweetfavorite