山内宏泰
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日常系」は19世紀に生まれていた!? 美術初心者におすすめの「ボストン美術館 ミレー展」
マンガ・アニメ界では、最近、キャラクターたちの何てことのない日常を描いた「日常系」と呼ばれるジャンルが人気です。しかし、実はこの「日常系」の魅力に、19世紀に気づいていた画家がいました。それはミレー。絵画にうとい人でも『晩鐘』『種をまく人』といったタイトルには聞き覚えがあるのではないでしょうか? 丸の内の三菱一号館美術館で開催されている「ボストン美術館 ミレー展 ―傑作の数々と画家の真実」の作品を取り上げながら、ミレーの魅力に迫ります。

ジャン=フランソワ・ミレー 《羊飼いの娘》 1870-73年頃 油彩・カンヴァス Gift of Samuel Dennis Warren 77.249 ボストン美術館蔵 Photographs ©2014 Museum of Fine Arts, Boston
どんな表現であれ、長い歴史を持つジャンルに何か新しいものを付け加えるというのは、たいへんなことです。新しい何かを加え得たわずかな人だけが、歴史に名を残すことになるわけなのでしょうね。
19世紀のフランスに生きたジャン=フランソワ・ミレーは、絵画の歴史を革新した偉大な表現者のひとりです。日本でも人気が高いので、作品のイメージはしばしば目にいたしますね。広々とした田園のなかで繰り広げられる農民たちの営みを、静謐な筆致で描き出している作品群です。夕暮れに祈りを捧げる《晩鐘》や、身体をかがめて地面に手を伸ばす人たちが描かれた《落穂ひろい》などがよく知られているところでしょうか。
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この連載について
山内宏泰
世に“アート・コンシェルジュ”を名乗る人物がいることを、ご存じでしょうか。アートのことはよく知らないけれどアートをもっと楽しんでみたい、という人のために、わかりやすい解説でアートの世界へ誘ってくれる、アート鑑賞のプロフェッショナルです...もっと読む
著者プロフィール
ライター。美術、写真、文芸その他について執筆。著書に『写真のフクシュウ 荒木経惟の言葉』(パイインターナショナル)『写真のフクシュウ 森山大道の言葉』(パイインターナショナル)『上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史』(星海社新書)『写真のプロフェッショナル』(パイ インターナショナル)『G12 トーキョートップギャラリー』(東京地図出版)『彼女たち』(ぺりかん社)など。東京・代官山で毎月第一金曜日、写真について語るイベント「写真を読む夜」を開催中。東京・原宿のスペースvacantを中心に、日本写真を捉え直す「provoke project」開催中。
公式サイト:http://yamauchihiroyasu.jp/