西洋と東洋は何が違うんですか?
Q. ファッションにしてもテクノロジーにしても、これまで主流だった西洋的な思想から、これからは東洋思想の方に近づいてくるということが言われています。猪子さんはその辺をどう考えていますか?
猪子:西洋というのは、客観思想が根本にあるんですよ。もっと言うなら、「絶対的な何かがある」と信じている思想ですよね。宗教もそういうことだろうし、ハリウッド映画を見ても、主人公が客観的な正義で、そこに客観的な悪が登場してきて、正義が悪を駆逐しますよね。「駆逐こそが秩序」という考えがベースにある。その思想は、産業革命や自然科学とは相性が良かったんですね。一方で日本は、世界は主観的でしかないと捉えていたと思うんです。たとえば、「もののけ姫」のタタラ場の女王には、タタラ場としての正義があり、もののけ姫には、もののけの森としての正義があって、客観的な正義はどこにもない。平和というのが、西洋の客観思想からすると駆逐につながるけど、東洋、少なくとも日本では妥協点の模索ということになってくると思うんですよ。
Q. そうした日本の主観的な思想の方が、いまの社会とは相性が良いと。
猪子:マスメディア中心だった頃の社会は、客観思想とスゴく相性が良かったと思うんです。でも、ネットが出てきて、誰もが情報発信できるようになって状況が変わった。