感情を増幅させるってどういうことですか?
Q. 猪子さんは社内ではどういう立ち位置で仕事をしているのですか?
猪子:具体的に作るものがまだ固まっていないような柔らかめの相談が来た時にアイデアを考えることもあれば、新規案件の大枠のコンセプト決めから、プロジェクトがある程度進んだ段階での細かいレビューまで色々ですね。他にも、上がってきたプレスリリースのリライトをしたり、プロジェクトタイトルを考えたりということをしてますよ。
Q. 自分のアイデアをどんどん放出していくような仕事が多いんですね。
猪子:放出っていうとすり減っていくイメージがあるけど、自分だけじゃなくて社内みんなで考えますからね。ファッションの場合は、ある程度アウトプットの範囲が決められているなかでやらないといけないから大変そうですけど、うちの場合は範囲が広いから、生み出したアイデアを色んな分野に展開できたりするんですよ。
Q. 僕の勝手なイメージですが、猪子さんという人は、人間が人間に向ける感情とは違う、ロボットやサイボーグのような次世代の感情のようなものを作ろうとしているのかと思っていたんです。猪子さん自身はとてもキャラクター性が強いですが、本当はロボット的な人で、でも人と会いたいからこういう仕事をしているのかなって。
猪子:天才ですね!そう言われたのは人生で初めてかもしれないです。たしかにもともと僕は感情が比較的少なくて、夢や欲望もなかったんですよ。「自分のこの感情は本物なのか?」ということをしょっちゅう疑っていました。例えば、キスというのは本当に気持ち良いのか? それとも文化や社会的な影響で良いと思い込まされているのか? とか。でも、そんな疑いをすべて捨てて、感情を解放することほどハッピーなことはないということにある時気づいて。それからは、自分の感情をいかに増幅させられるかということにスゴく興味が出てきたんです。普通、大人になるほど欲望を抑制する方法を覚えていくじゃないですか。でも、僕はその逆のことばかり考えるようになっていって(笑)。
Q. 客観的に感情を膨らませようとすること自体、やっぱりロボット的な感じがします。
猪子:そうなのかもしれない。感情って主観的なものじゃないですか。僕はそれを常に肯定するんですね。感情というのは環境によって決定されることが多いんです。例えば、潰れかけの会社を友だちと経営していて、しかもお互いの役割が違ったら、その友達無しでは生きていけないから、普通の友達以上にその人のことを大事にすると思うんですね。それがリアルな感情でしょう。自分が命を張れるほどの愛が結ばれる環境が作れたらスゴく幸せなんじゃないかなって。それは環境が決定することだから、その環境を設計して、いかに自分の感情を増幅させられるかに興味があるんです。
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