第36回】シンガポールの日本人美容師に聞く、日本の悪循環〜サービス業も内需消滅でアジアへ

各国の名門校で学び、世界トップのシンクタンクに所属した筆者が、知のグローバル競争の最前線事情を語る


Photo by Thinkstock

高齢化する日本の美容室の顧客

シンガポールに移住されてイキイキしている美容師さんにカットをしてもらった時の話をお伝えする。このお店は東京の一流店よりやや高い値段設定だが、彼は大人気で、予約を取るのも楽ではない。東京に見切りをつけて、アジアに骨をうずめる覚悟で、家族とともにシンガポールに移住してきたこの美容師さんからいつも多くのことを学んでいる。大きな決断した人なので、日本、東京の、現状を冷静かつ正確に見ていると感じる。

「東京の高齢化は深刻だと感じています。今、美容室のメッカは原宿や青山ではなく、銀座になっています。美容業界で若い人という定義も、少し前までは10代後半から20代前半でしたが、現在は5歳ほど上がって30代前半までを指します。お客さんの高齢化は激しく、美容業界も介護予防のようなサービスになってきています」

「主要顧客だった若い女子は節約に走っています。もう美容室には来ないですね。だから原宿や青山で美容室をやっていてもお客さんはこないのです。彼女たちは自分でなんでもやるのです。美容器具が進化しているので、友達とそれをシェアしてカットやセットをしあったり、あるいはスマホで簡単にカットモデル依頼が見つけられるので、そこでプロにやってもらったりしています」

激減する消費

こういった現象は美容室に限ったことではない。若者の節約志向は飲食業界にも打撃を与えている。自分で弁当を作って会社で食べる「弁当男子」と呼ばれる人が増えているらしいが、これは男女にいえることで、若い世代は外食をあまりしなくっているという。夜の飲み会も行かない若者が多いと聞く。

これは、完全な悪循環の始まりだ。人口減少と高齢化で、たださえ、消費活動が活発といわれる若い世代の数が減っているのに、その若い世代が消費活動を抑制しているわけだ。

「若い子は若い子なりに、自分たちの時代に希望が持てず、これから税や社会保障の負担が重くなり、将来の返金は大幅になくなってしまうことを、今のうちからなんとなく気づいているのではないでしょうか。つまり、政治や上の世代を信用せず、自己防衛をし始めているんだと思います」

このシンガポール在住の日本人美容師さんは、会社の若手社員と話していてそう感じるのだという。

無駄使いの王様であったバブル世代の私からみて、若い人が無駄使いしないということは立派なことだと思う。しかし、経済全体を考えると、消費の主力とあてにされている世代が、消費を抑えて節約に走ったら日本経済はどうなるだろうか?

その美容室にあった日本の雑誌に「シニア家電が人気」という見出しがあった。そのページを開いてみると、シニア家電とは少量のご飯を炊く電気炊飯器などを指す。少ない量でも美味しく炊けるというふれこみだが、「シニアは食べない、着ない、買わない」を象徴する話だと思った。

シンガポールにあるこの美容室は日本の最大手美容チェーンとのJV(共同企業)なので、シンガポールを含め東南アジアへ派遣される予定の美容師が列をなしているという。「若い社員でシンガポールに来たいという子は増えていますね。シンガポールやアジアのイメージは年々よくなっていますからね」

日本の閉塞感とアジアの高揚を若い世代は感じ始めているのだ、と彼は指摘していた。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

現代ビジネス

この連載について

初回を読む
田村耕太郎「シンガポール発 ASEAN6億人市場が世界を動かす!」

田村耕太郎

世界最高の高等教育を誇るアメリカをはじめ、シンガポール、インド、中国、ヨーロッパ、そして日本は、グローバルで戦うために、いかに「知」を鍛えているのか。各界で国際的に活躍する人材は、どうやって自分を磨いているのか。各国の名門校で学び、世...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません