文章力は、伝達力の基本」【第9回】あなたの文章がまとまらない理由

「日本人が日本語の文章を書くための文章力は、わざわざ身につけなくてもよい」は誤解です。子どものころに「文章を書く」という指導をきちんと受けてこなかった私たちに、入門書を得意とする作家・木暮太一さんが、文章力を身に付けるためにはどうすればよいかをお伝えします!


〔PHOTO〕gettyimages

文章をわかりやすくする秘訣は2つです。

1.最終結論を1つにする
2.最終結論を関係ない要素を書かない

これさえ守れば、かなり分かりやすい文章が書けるようになります。

ただ、この2つを徹底することができないこともままあります。さらに、「この2つを徹底すること」自体が難しく感じられることもあります。もしかすると、それはこんなことが原因かもしれません。

ただ書きたいだけ

文章がまとまらない一番の理由は、「闇雲に、ただ書きたいだけの要素を並べてしまうから」です。「ただ書きたいだけ」の内容を書いてしまうから、まとまらないのです。

こう書くと、誰もが否定したくなります。ところが、「ただ書きたいだけ」「自分が知っていることを並べたいだけ」の文章が実際に多くあります。

「いろいろなことを知っている人」と認められたいという気持ちで書いている人もいます。しかし、それによって「文章が下手な人」と見られてしまうことになります。

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【新商品の販売推移に関する報告書】

1.売上好調の要因
今年4月に発売した新商品は、計画に比べて200%と、好調な売上を維持しています。今回の新商品がヒットした理由は、販売チャネルの見直しと、クライアントA社への売り込みに成功したことがポイントと考えます。このA社の決済者は以前は○×取締役でした。この方は比較的「前例」を重んじる方で、これまでの付き合いを大事にされる方でした。

しかし今回から○○専務に決済者が変わりました。○○課長は、非常に論理的で本質的な判断をする方です。わたしは、先日の業界新聞でA社のポストが変更になることを知り、事前に「決済者が変わる」という情報をつかんでいました。そのため、提案書を「○○専務向け」に書きなおし、受注できたのです。

2.今後の追加販売戦略
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この方は、新商品がヒットした理由として

・販売チャネルの見直し
・クライアントA社の獲得

を挙げています。

ところが、その後は、「販売チャネル」の見直しには一切触れず、いかにして自分がA社を獲得できたかに終始しています。

たしかに決め手は、「決済者が変更され、新しい決済者が気に入るような提案書を書いたこと」かもしれません。しかしそのような個別の細かすぎる事情を報告書にまとめると、主旨がぼやけてしまいます。

「業界誌を事前に読むことが成功のポイントだった、ということ?」と主旨を勘違いされてしまうこともあるでしょう。仮に「業界誌も含めた事前の調査がヒットのポイント」だったとしたら、「ヒットした理由」として、まずそれを挙げるべきです。

自分の成果を認めてもらいたい、事前に行った努力を評価してもらいたいという気持ちは分かります。しかし、言いたいことがブレてしまうのであれば、それを報告書に盛り込むべきではありません。

補足の入れすぎ

また、「補足」をしているうちに、いつの間にか本題から外れていくことにも気をつけなければいけません。良かれと思って入れた補足が、文章のまとまりをなくしてしまうのです。

理解しづらい項目やキーワードが入っていると、読み手は文章全体を理解できなくなります。しかし、それを恐れて「補足」を入れすぎると結局、何が言いたかったのか分からなくなってしまうのです。

そもそも「補足」は「読み手に結論を理解してもらうために必要な要素」です。つまり、結論への誘導になっていなければ、それは「補足」とはいえません。当然、「いいわけ」や「自分の知識のひけらかし」は補足ではありません。

補足を入れるときには、その情報を書くことで読み手が結論を理解しやすくなるかどうかを考えましょう。

以上を踏まえて、以下の文を読んでください。

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【新商品の販売推移に関する報告書】

1.売上好調の要因
今年4月に発売した新商品は、計画に比べて200%と、好調な売上を維持しています。なお、計画では月度の販売数が2000個でしたが、現状は毎月4000個程度売れています。この計画を作成したのは、昨年度末で、依然として海外市場の不振や円高の影響が続き、やや市況を厳しめに見ていた時期ですが、そうだとしても200%達成は「いい成績」だと自負しております。

今回の新商品がヒットした理由は、販売チャネルの見直しと、クライアントA社への売り込みに成功したことがポイントと考えます。今までの販売チャネル別売上構成は、大手量販チェーン65%(X社21%、Y社11%、Z社6%、その他合計27%)、コンビニ25%(α社7%、β社5%、γ社4%、その他合計9%)、その他一般小売店7%、通販・インターネット3%(インターネットでの販売は毎年50%で増加中)でした。

それをコンビニでの販売を強化することで大手量販チェーン45%(X社16%、Y社10%、Z社4%、その他合計15%)、コンビニ35%(α社15%、β社6%、γ社5%、その他合計9%)、その他一般小売店5%、通販・インターネット3%になりました。なお、インターネットでの販売が増えたため「通販・インターネット」の比率は横ばいになっています。

2.今後の追加販売戦略
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できるだけ丁寧に報告しようという意図は感じられます。しかしこの文章では「本当は何が言いたかったのか?」が分かりにくくなっています。

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木暮太一の「経済の仕組み」

木暮太一

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