第35回】シンガポールのインターナショナルスクールの魅力

各国の名門校で学び、世界トップのシンクタンクに所属した筆者が、知のグローバル競争の最前線事情を語る


〔PHOTO〕gettyimages

シンガポールのインターナショナルスクールの魅力について、うちの娘と同じインターナショナルプレスクールに子供を通わせている父兄たちとよく議論する。教育熱心でグローバルに活躍している親が多いので情報が豊富で非常に参考になる。

彼らが挙げるシンガポールのインターナショナルスクールの魅力はおおまかにいえば以下の2点に集約されると思う。

1)多様性 2)教師の質

真の「多様性」の意義とは

多様性とはただ単に学校の中に「色んな国籍・民族・宗教の子供がいますよ」ということではない。多様性を国内に持ち、持つだけでなくその多様性からくるメリットを活かし、デメリットをコントロールしようと腐心する歴史と蓄積がある国家がシンガポールだ。

そのノウハウは政府にとどまらず学校にもいろいろな形で蓄積されている。多民族国家をよりよく運営するための政策が新設され、実験され、改善が続けられている。宗教や食事の違い、各国ごとの祝日の意味や祝い方などを小さいころから学ぶ子供たちをみて感心する。お互いの違いをリスペクトする真摯さを学校という空間の中で実感しながら学ぶのだ。

スイスやシンガポールは国内市場が極めて小さいために、大きな成功を狙う高度人材は、必然的に外に出て行くことが求められる。人材を海外仕様に育てる必然性を常に感じて、自国とは違う環境で生き抜く多様な人材育成に自然と視点がいっているのだろう。

学生の多様性だけでなく、彼らを生んだ親の多様性も半端ではない。生まれた国と今いる国とパスポートの発行国がすべて異なるという人もザラだ。夫と妻が違う国籍というのはよくある話で、我が家のように家内も私も日本で生まれた日本人で、パスポートも日本のものだけという例のほうが娘のクラスでは異例である。

多様なバックグランドを持つ親の家庭教育や学校への介入もまた「蓄積」として多様性教育の血となり肉となる。親がシンガポールやスイスで、またそこに拠点に持つグローバルな組織を運営し、多様な人材を管理しながら生き抜いていて得た知恵は、主に家庭教育を通して自然と子供に受け継がれる。

この有形無形の蓄積が、子供たちが暮らす家庭や、学校や、生活している社会全体に満ち満ちているのだ。これこそが「多様性に触れ学ぶ利点」といっていい。

教師の質は個人名の情報となる

この手の学校で子供を教育するために、親は物心ともにかなりの投資をしているので、驚くほど詳細な「教師の質」に関する情報を持っている。学校の評判はネット上にもあふれている。しかし、各教師の正確な評価はあまり公開情報になっていない。これは主に口コミで共有されている。

そして、親が教師個人の情報にこだわっていることをよく知る学校側も、「いい先生」確保のための努力を惜しまない。そして「いい先生」は学校を選ぶ。当たり前だが、いい学生を相手にいい教育をしたいからである。学校も先生もプロなのだ。

それは教える科目だけではない。受け持つ生徒の「年齢」に関してもプロなのだ。うちの娘が通うインターナショナルプレスクールでも、その後の進学先として考えているいくつかのインターナショナルスクールでも、学校の先生は「各年齢専門」のプロなのである。

2歳児を教える先生は2歳児しか教えない。中学1年生を教える先生は1年生しか教えない。つまり教える科目だけでなく、教える年齢についても特化しているのだ。だから「2歳の精神状態」、「10歳児の傾向」、「13歳特有の心身の状態」というものを知り尽くしているのだ。

もちろん皆、児童心理学や脳科学をきちんと修めている。しかしそれだけではなく、「○歳の××」というレベルでの知識と対応力が蓄積されているのだ。これは我々実の親では太刀打ちできない知識であり、年齢別の対応能力は学習計画自体の根幹をなすものなのだ。

そしてそれらを含めた「いい先生」の情報は恐ろしいほど口コミで共有されている。学校選びは学校や創始者の歴史や理念だけでなく、わが子を教える「先生の名前」で行われていると言っていい。私はそこまで知らずに今の学校を選び今のクラスの先生たちにお世話になっているのだが、情報通の親たちに聞くと、幸運にも「とてもいい選択」だったようだ。

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田村耕太郎「シンガポール発 ASEAN6億人市場が世界を動かす!」

田村耕太郎

世界最高の高等教育を誇るアメリカをはじめ、シンガポール、インド、中国、ヨーロッパ、そして日本は、グローバルで戦うために、いかに「知」を鍛えているのか。各界で国際的に活躍する人材は、どうやって自分を磨いているのか。各国の名門校で学び、世...もっと読む

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