ポジティブで友達が多い人が長生きするのは、科学的根拠がある

歳を重ね、中・長期的な展望を持てなくなると、人はうつ病に陥りやすいそう。そんなとき、友達との「つながり」がもたらす脳内物質は、うつ病になるのを防ぐといいます。今回は「つながり」と寿命との関係を、科学的に考えます。
予防医学研究者の石川善樹さんが、国内外で行われた数多くの研究を例に挙げながら、健康にとっての「つながり」の重要性をおもしろく、わかりやすく解説した一冊、『友だちの数で寿命はきまる 人との「つながり」が最高の健康法』(マガジンハウス)よりお届けします。

「つながり」はなぜ健康に良いのか?

 これまで「つながり」が健康と長寿に効くらしいという状況証拠をいくつか並べて見てきましたが、それが真実だとしたら、そもそも「つながり」はなぜ健康に良いのでしょうか。この章の最後にその点について考えてみたいと思います。

 そのメカニズムに関する研究は現在進行形でいままさに世界中で行われているところですが、特定の行動の何が健康に良いかを立証するのは簡単ではありません。たとえば、運動は確実に大腸がんのリスクを下げることが研究でわかっていますが、どういうメカニズムで運動が大腸がんのリスクを下げるかは完全にはわかっていないのです。

 こうした事実を踏まえたうえで「つながり」の健康へのメリットについて私なりに考えてみたいと思います。

 運動不足は健康を害します。特に、高齢者になると体力が低下してじっとうちに引きこもるタイプが増えてきます。その点、「つながり」があるほど、うちから外に出かける機会が増えますから、運動不足の解消になります。

 また「つながり」が多いほど、ストレスを解消する手段も増えます。

 心身はコインの表裏のように表裏一体ですから、職場や家庭などで心理的なストレスが加わると身体にも悪影響が出てきます。ストレスが加わると、体内で毒性の高い活性酸素の発生が増えてきます。活性酸素は、心臓病や脳卒中を引き起こす動脈硬化(動脈の内腔が狭くなり、詰まりやすくなった状態)の発端となり、遺伝子を傷つけて、がんの芽を秘かに作っています。

 身体のさまざまな機能を調整している自律神経の中枢である視床下部にストレスによるダメージが及ぶと、自律神経が乱れて数々の悪影響が全身に及びます。それを放置すると免疫力が下がり、ホルモンの分泌も乱れるようになり、血圧や血糖値が上がりやすくなり、生活習慣病に罹りやすくなります。

 現代に生活している以上、人間関係などのストレスをゼロにするのは難しいのですが、一つのコミュニティだけではなくて、複数のコミュニティに所属して多くの多様な「つながり」を持っている方がストレスを解消しやすくなります。

 たとえば、会社で仕事上のストレスがあったとしても、家庭を持っていたり、趣味のサークルに所属していたりすると、自分がほっとできる逃げ場があります。それが、ストレス解消につがなるのです。

 もしも仕事ひと筋の単身者で友達も少なく、無趣味で地域社会とも没干渉で何のコミュニティにも属していないとしたら、職場でのストレスによるプレッシャーの逃げ道がありません。ストレスを溜め込む一方で吐き出せないと、風船が圧力に耐え兼ねて破裂するように、身体のどこかに異変が出ても何の不思議もないのです。

 さらに「つながり」が多くある人ほど、自らのアイデンティティや自尊心が持ちやすくなりますし、生き甲斐も見つけやすくなります。「生き甲斐」はおそらく「生きたい」につながります。

 こうした複数の要素が複雑に絡み合い、「つながり」が病気のリスクを抑えて長生きを促しているのではないかと考えられています。

友達がもたらす、最大の効用。

 「つながり」が少なく、友達が少ないと早死にするという研究結果もあります。

 36ページに登場したアラメダ研究で得られたデータを用いて、当時イェール大学で研究をしていたテレサ・シーマン博士らが分析したところ、60代以降で月に5回以上友人との接触がある人は、そうでない人と比べて死亡率がおよそ17%低いことがわかりました。その理由としては、友達のネットワークがあるとストレスを軽減する効果があると考えられています。

 あまり知られていませんが、肉体的ストレスと精神的ストレスでは脳の中での処理の仕組みが若干異なっています。

 肉体的ストレスは脳の視床下部というところに直接影響が及びます。視床下部は自律神経やホルモンの中枢であり、食欲や性欲といった情動のコントロールも行っています。ですから、肉体的なストレスがあると自律神経やホルモンのバランスが乱れるようになり、食欲が落ちたりしてさまざまな不調が生じるのです。

 それに対して精神的ストレスは一度大脳新皮質を介してから、視床下部に影響が及ぶことが知られています。

 大脳新皮質は理性を司っているところです。要するに精神的ストレスは理性による解釈次第で減ったり、増えたりする可能性があるのです。

 孤独で一人で悶々としていると負の連鎖からマイナス思考に陥り、精神的ストレスが増幅される恐れがあります。

 友人が多くて「つながり」が多様だと、友達に話しているうちにストレスが軽くなってほとんど解消されることもあるでしょう。

 肉体的ストレスに精神的ストレスが重なるとダブルパンチで健康を害しますが、そこに「つながり」があると精神的ストレスが緩和されるため、健康被害を最小限に抑えて早死にのリスクが下げられるのです。

中・長期的展望がないと、生きる意欲が湧かない。

 さきほど修道女を対象とした研究で、ポジティブ思考が長生きするという研究結果について触れましたが、「つながり」はポジティブな感情を生み出します。

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友だちの数で寿命はきまる—人との「つながり」が最高の健康法

石川善樹

「つながり」が少ないと死亡率が2倍ってご存じですか? 孤独は喫煙より身体に悪い、お見舞いに来てくれる人の数で余命が変わる、男性は息子の嫁に介護されると長生きし、女性は旦那に介護されると長生きする……。 予防医学研究者の石川善樹さんが...もっと読む

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コメント

YKosugi0413 まさしくこれは僕のやりたいことのひとつ! 5年以上前 replyretweetfavorite

hirokiwachigai これはあるだろね。 5年以上前 replyretweetfavorite

warakashi 中・長期的な展望が持てる⇒生きることに意欲的に⇒気力が充実+生きがい 5年以上前 replyretweetfavorite